『酒は百薬の長』と言うけれど・・・

どうも人間、無知であればあるほど、故事成語の類を自分に都合よく解釈するようです。

「酒は百薬の長」というのもその一つ。

これはよく酒飲みの言い訳に使われます。

この言葉の出典は『漢書』食貨志で、「夫塩食肴之将 、酒百薬之長、嘉会之好」から来ています。

「塩は食物の将であり、酒は多くの薬の中の長である。宴会によい」といった意味。

なぜか日本ではこの部分のみ切り取られて紹介されることが多いようです。

しかし、これは別に塩や酒をほめそやすための文章ではありません。それにはまず、前漢を倒し、新を打ち立てた王莽が定めた「六莞」を知る必要があります。

「六莞」とは、塩、酒、鉄、貨幣、名山大澤(林業、鉱業、漁業、牧畜等)、五均ヨ[貝に余]貸(物価管理とローン)を専売、国営にするという政策で、食貨志はなにゆえ六莞政策をするのかを説明する部分です。

簡単にいうと、これらは国民生活に欠かせないものであるから、国家が管理し、貧しい物にも余慶を与えるための政策であると説明しています。

つまり、酒が百薬の長というのは医学的根拠があっての言葉ではないのです。

むしろ、同時期の漢代の医学書では、酒を水のように飲んだり、酔ったままセックスすることは長生きを阻害するものであると戒めています。

もっとも、最近の研究では適度なアルコール摂取であれば寿命をのばすという結果も出ているようです。

その適量とは1日にアルコール20g。

例えばアルコール度数5%のビールであれば、350ml缶1本とちょっと、一般的なアルコール度数13%程度の日本酒であれば、1合弱ほど、アルコール度数10%程度のワインであれば、2杯弱です。

アルコール度数10%というのはワインの中では低めなので、実際はもうちょっと少なくなるはず。

しかし、これは純粋にアルコールの量だけの話なので、ここにつまみが加わるとちょっと事情が変わってくるでしょう。

いくら「適量」におさめたところで、揚げ物など脂肪分が多いものを一緒にとればメタボ一直線。結局寿命を縮めることになります。

つまみには、不飽和脂肪酸を多く含むナッツがいいなどという人もいますが、お酒に合う塩で味付けしてあるものを多く食べれば塩分過多になるし、不飽和脂肪酸が体にいいといっても、これも適量を摂っていればいいという話であって、大量にぼりぼり食べると逆効果。

つまるところ、健康のため、寿命をのばすために酒を飲んでいる人なんていないだろうし、酒飲みが「適量」を守って飲むはずがないので、「適量」なんて机上の空論ですね。

健康になりたかったら食事を節制し、運動すればいいと思います。

関連記事

ページ上部へ戻る