風邪をひいたときはホットアルコールドリンクで温かく
物事に対する評価を「おシャレ」か「かわいい」でしか表現できない人というのがいるわけですよ。私は以前、インド式のマサラチャイをうちでよく作ると言ったら「おシャレですね~」って言われたことがあります。でもマサラチャイというのはリーフティーより質が悪い茶葉を丸く固めたCTCという茶葉を煮て、スパイスや牛乳を加えたインドの街角で飲まれている庶民のドリンクで、おシャレとは対極にあるような飲み物です。
ホットワインとか、朝ドラの『マッサン』で知られて有名になり即忘れられたホット・ウィスキー・トディーも、現地では古くから庶民に親しまれている甘酒のようなもので、おシャレとは程遠いものなのに日本ではなぜかおシャレドリンク扱いされているのが超絶に謎です。
ホット・ウィスキー・トディーは、スコットランドの伝統飲料。ウイスキー少々をカップに注ぎ、砂糖とレモンを加えて熱湯を注ぐだけという非常に簡単な作り方の飲み物。
一方ホットワインは、赤ワインを熱して、レモン、オレンジ、シナモン、クローブと砂糖を加え、香りと甘味を加えた、こちらもフランスやドイツの伝統飲料。フランスではヴァン・ショー(ホットワイン)を飲むとノエル(クリスマス)が来たなあと実感するような、定番の冬の飲み物。
ホットワインはどちらかというと寒い季節に体を温めるもの、ホット・ウィスキー・トディーは風邪をひいたときなどに症状をやわらげるものとして飲まれているようですね。そういう意味ではホット・ウィスキー・トディーは甘酒というより卵酒のほうが近いかもしれません。
ちなみに日本の卵酒は、カップにタマゴと砂糖を入れてかるくかきまぜてから、温めた日本酒を注いで一気に混ぜて作ります。日本酒と一緒にタマゴを熱するとタマゴが固まってしまいます。日本酒だけ熱して後から注ぐと、お酒にタマゴが均一にまざってくれます。
風邪対策のホットドリンクとしては、香港のホットコーラというものもあります。これは、鍋でひと煮立ちさせて炭酸を飛ばしたコーラに、レモンとしょうがを加えたもので、筆者は実際作って飲んだことがありますが意外とおいしいです。香港はかつてイギリスの植民地だったので、或いはホット・トディーやホットワインのような発想でホットコーラが生み出されたのかもしれません。
風邪をひいたときには温かい甘い飲み物を摂るというのは世界共通の知恵のようですね。ただ、注意点としてはアルコール分はあまり強くしないこと。アルコールは血液中にいるときは確かに血管を拡張し、血流をよくしますが、アルコールが分解されると急速に血管が縮小してかえって体が冷えてしまいます。特にウィスキーを火にかけないホット・ウィスキー・トディーは、ウィスキーの分量を少なめにしたほうがいいでしょう。