ワインが喜ぶ「飲まれ頃」とは
私たちの性格が一人一人違うように、食べ物や飲み物の好みも千差万別です。特に「チーズ」や「ワイン」など嗜好性の高いものなら、なおさらのことでしょう。
フレッシュな勢いの良い泡が特徴のシャンパンを好む人もいれば、泡の勢いよりも落ち着いた穏やかな味わいを好む人もいます。
ということで、今回は、私たちが「飲みたい」頃のワインではなく、ワインが「飲んでほしい」と願う「飲まれ頃」というものを考えてみたいと思います。それぞれのワインが、その魅力を最大限に発揮できる「飲まれ頃」というのは、ワインのタイプによって大きく異なります。
・「ボージョレ・ヌーヴォー」に代表される、「その年に収穫したブドウで作られたワイン」である「新酒」は半年以内
・新鮮な状態で飲むことに適しており、時間とともに劣化が進む「早飲みタイプ」は、2~3年以内
・個性の強いブドウ品種から造られたり、樽熟成により複雑味を増した「コクのある白ワイン」は、5~10年
・熟成することにより味わいや香りが複雑になっていく「長期熟成タイプ」の赤ワイン(出来の良い年のもの)は、10年~20年
・糖度が非常に高く干しぶどうのような「貴腐ぶどう」から造られた「貴腐ワイン」や、「優良なヴィンテージ」の銘柄は、30年以上
以上が、「ワインが望む」飲まれ頃です。
最高の「飲まれ頃」で頂くワインは、いくつもの芳醇な香りが鼻腔を通り抜け、味わいもコクがあるのになめらかで、何年経ってもその時の記憶が鮮明に蘇るような素晴らしい体験をさせてくれます。
「早飲みタイプ」のワインを抜栓せずにおいても、それで「熟成」されるわけではなく単に「劣化」が進むだけですし、「熟成タイプ」で味や香りの「深みやコク」を楽しみたいワインを時期尚早で抜栓してしまうと、今からやっと複雑な味わいを造りあげていく、という時に大変もったいないことになります。
かといって、「飲み頃」に厳密になりすぎる必要はありません。
あまりにも飲み頃の時期が過ぎているものや、保存状態が悪くて舌を刺すような酸味を放つ場合は別ですが、そうでなければ少しくらい飲み頃が早かったり、または飲み頃が過ぎていても、十分に楽しめることでしょう。