欧米ワイン業者は日本で「おいしいワイン」が売れるなどと思ってはいけない
日本ではここ数年右肩上がりでワインの消費量が上がってきています。そのためか、欧米のワイナリー、輸出業者は、日本に販路を広げようと注目している様子。
イギリスの国債市場調査会社ユーロモニターや、これもイギリスのワイン市場調査会社ワイン・インテリジェンスは、日本におけるワイン市場の報告を出しています。
特にワイン・インテリジェンスは、日本が世界で3番目に魅力的なワイン市場であるとしています。
ただ、あまり期待しすぎるのもどうかなと、日本人としては思います。
かつて「ワインブーム」なるものが日本でも起きたことがあります。例えばバブル期のボジョレー・ヌーヴォーブームや、ポリフェノール効果による赤ワインブームです。
しかし、ボジョレー・ヌーヴォーブームは日本で一番最初に解禁になるからという「縁起物」的な扱いでブームになっただけだし、赤ワインブームも赤ワインに含まれるポリフェノールが心疾患リスクを下げるというニュースに踊らされたにすぎません。
これは、一過性のベルギーワッフルブームやナタデココブームと同じようなもので、ワイン本来の味が日本人に受け入れられ、ブームになったというものではありません。
近年ワイン消費量が増えている要因としてまず大きいのは、チリ産やスペイン産などの安いワインが入ってきていること。そして、規制緩和によりドラッグストアなどでそうした安いワインが簡単に手に入るようになったためでしょう。
2つ目はテレビなどで繰り返される印象操作。
ワインはオサレ、ワインは若い女性に合っている、ワインは和食にも合う、こういういわばメディアによる洗脳が繰り返され、日本酒のシェアを奪うようにしてワインの消費量が増えました。
海外調査会社の目には、日本人はスタンダードな味のものよりも変わった味のワインを好むように映るそうです。
しかし、これは日本には欧州のような堅固なワイン文化などありませんから、そもそもスタンダードがなにかをわかっていないだけでしょう。
そもそも、日本のワイン消費者で味を基準にワインを選ぶ人はどれだけいるのでしょうか?私は日本人の「ワイン消費者」といわれる中の1%もいればましなほうではないかと思っています。
毎年正月に「芸能人格付けチェック」という番組が放送されます。ここ近年は私は見ていませんが、私が見ていたころはワインテイスティングが必ず入っていました。二種類のワインのうち、高級なワインを当てろというものです。
多くの芸能人がここでひっかかります。それは「飲みやすいほう」を選ぶからです。
高いヴィンテージワインなどは渋みがあったり味が複雑で、その真のおいしさはワインを飲み慣れ、舌が肥えた人でなければわかりません。
安いワインは甘く単純な味で飲みやすい。
飲みやすいほうがおいしいから高い方という発想でしょう。これは大部分の日本人にあてはまると思います。
要するにうなぎと同じです。うなぎは旬の冬に食べると脂が乗っていて本当においしい。
でも、4月ぐらいからちょっと味が落ち始め、梅雨明けのうなぎなんてぼそぼそで食べられたものじゃありません。配合飼料で無理に太らせてるうなぎだって同じです。
江戸時代には夏にうなぎの売上が減り、「土用の丑の日にはうなぎ」というものがでっち上げられました。
現代日本ではうなぎの売上が一番上がるのは夏土用の丑の日。
冬のほんとうにおいしいうなぎを知っていれば、真夏にうなぎを食うなんてバカなことはしない。
でも、大部分の人はまずいうなぎを必死に買い求める。味なんて気にしてないんです。
だから、欧米の会社は欧米の通に評価されるようなレベルの高い味のものを日本で売ろうなどと勘違いしてはいけません。日本で最も売れるのは、安くて度数が低いジュースみたいなやつです。