熟成と飲み頃の見極めについて、どうやって判断すべきでしょうか?
白ワイン赤ワインを問わず、ワインの熟成が進むにつれて、その香りは土の香りのようになっていきます。土やスパイスに近い香りが強まり、最終的にはワイン好きのフランスの方々が表現されるところのトリュフのような香り、つまり土の中から掘り出したきのこの香りに達します。
湿った土みたいな独特の香りから、枯れた葉の香りやトリュフのような香りに変化し始めた頃が、赤ワインそれも上質のそれの飲み頃だと英国人は言うようです。渋みのある味わいと他のそれとが均衡のとれた状態で、いわゆるフィネス、つまり繊細で緻密な状態であるのです。この状態の場合、抜群のバランス状態なので、料理の付け合わせではなく、ワイン単体として楽しめるでしょう。
料理とともに楽しむのであれば、前述したフィネスの状態、つまりワインに何らかの刺激が残っている方がよいとフランス人は主張します。この考え方の違いは英国人とフランス人のワインに対する考え方の違いから来ています。英国人はワイン自体を楽しむ傾向にありますし、一方フランス人はワインは料理と一緒に楽しむものと考えています。
150年ほど経過したワインがあるとします。そのワインの評価は、各々の評価基準で大きく変わっていきます。ワインをたしなみ始めた人なら、きのこや枯れ葉や土の独特の香りのワインよりも、みずみずしい果実の香りが広がるものを絶対に評価するはずです。
このワインはまだ渋みが足りないので、飲み頃にはまだ10年程足りないだの、わざわざ放物線を書いてどれくらいが飲み頃かを図に書こうとする方がいますが、それはその方達の好きな飲み頃を主張しているだけです。あなたが知らない人から、若過ぎるだの、年の取り過ぎで峠を越えているだの言われると、いい加減にしろと思うでしょう。
ワインも同じなのです。ワインは時間によっていろいろと変化していく飲料なのです。それぞれのところで良さや必然性があるのであり、好みが人によって違ってくるのは当たり前なのです。前述した放物線で飲み頃を図面化しようとする試みは、ある点を境にワインの香りは下降線をたどると主張しているものなので、好ましく無い発想と言えるでしょう。