地下から地上、ワインセラーからワインルームへ。ワイン保存の概念が変わる!

ワインセラーというと、暗くて涼しい地下にひっそりとワインが並んでいる様子を思い浮かべるのではないでしょうか。

洞窟につくられたワインセラーを公開していることもあります。

ワインの生産地として名高いカリフォルニア州ナパバレーのワイナリーでも、地下にワインを貯蔵しているそう。直射日光とは無縁で温度が低く、湿度の高いところはワインの保存に適しているからです。

なんとなく、どこか暗くてジメジメしたところにあるイメージのワインセラー。しかし、そのカリフォルニア州があるアメリカでは、そのワインセラーが今までとは違う様相を見せているようです。

ワインセラーのない家は珍しい?

ワインセラーがある家といえば、一部の資産家かよほどのワイン愛好家か・・・日本人の感覚ではどうしてもそう思ってしまいます。しかし、アメリカでは住宅を売却する際、「ワインセラーがあるか否か」が大切なポイントのひとつとなっているのだそうです。

新築の一戸建て住宅や分譲マンションでも、ワインを保管するスペースがあるところが増加傾向にあるそうです。

アリゾナ州のワインセラー工事会社の経営者によると、高級住宅にいたっては「ワインセラーがない方が珍しい」とか。

また、中古住宅の多くもワインセラー付きなのだそうです。

階段下のスペースや壁を掘ったものが多いようですが、アメリカの人々にとってワインは生活に欠かせない身近な存在であることが伺えます。

見せるワインセラー、「ワインルーム」が増えている

ワインボトルのラベルは趣向を凝らした存在感のあるデザインが多く、ワインの大きな魅力のひとつにもなっています。

階段下や地下のワインセラーでは、それらを取り出すことでしか眺めることはできませんが、せっかくの素敵なラベル、ワイン愛好家ならそのデザインごと楽しみたいところでしょう。

最近のワイン収集家は、そんな素敵な魅力のひとつを「見せて収納する」傾向があるのだそう。それも、きちんとワインに適した温度や湿度管理を徹底した部屋で保存しながら見せるというのです。

自宅の一部にガラス張りの部屋を作り、千本程度のワインボトルを見えるように並べ、LED照明で光の演出もできるという、今までのワインセラーの常識をくつがえすものが存在するのです。

ワインに光は良くないようですが、紫外線を抑えるLED電球が使われていますから、心配ないとのこと。

さらに直射日光を避けるため、ガラスに遮光するカバーも付けられていたり、ガラスそのものに紫外線をカットする効果があるものも使われたりするということですから、「見せながらにして保存する」ということが実現出来るわけなのです。

もちろん、空調設備は整っていますから、温度管理は問題ありません。ワインセラーというよりは、もはや「ワインルーム」なのです。

ワインの保存に最適な環境が守られれば、保存場所が地下である理由はありません。

地上にできた「ワインルーム」は、自分がいつでも眺めていられるお気に入りの場所に設置することができるのです。

いつでもキッチンやリビングから見えるように設計するなど、日常生活の中でもワインボトルを「見て楽しむ」ことができるワインルームがあるお宅もあるというから驚きです。

若い世代の新しいワイン観

なぜこのような「見せる保存」が広がったかというと、アメリカでは若年層にワイン愛好家が増えていることがその理由とされています。

ワイン購入者、収集家ともに顕著な低年齢化が進んでいるのだそうです。

調査によると高級ワインの購入者の過半数が「新世紀世代」なのだとか。

「新世紀世代」とは2000年代に成人する若者たちのこと。日本の感覚では平成生まれの若者たちといったところでしょうか。

ワインはその香りや風味はもちろん、その種類の豊富さ、熟成させる楽しみやボトルデザインなど、若者を惹き付ける要素が多くあります。現代アートや建築に興味を持った若者たちが、今までの概念にとらわれない新しい感覚で「ワインルーム」を造ることは、自然なことなのかもしれません。

地下のワインセラーはなくなったのか

それでは、地下のワインセラーはなくなる傾向にあるのでしょうか?

ワイン収集家で、あるソフトウェア会社のオーナーの男性は、「見せる保存」ができるガラス張りのワインルーム所有者の1人です。

しかし、自宅にはそれ以外にもうひとつワインセラーが存在するそうです。それはガラス張りではなく木やレンガで造られた伝統的なもの。オーナーの男性の妻がこの形式を好んでいるとのことです。

どんなに空調設備や紫外線対策の技術が進んでも、伝統的なものの良さを好む人はいなくならないのでしょう。

ワインセラー設計の専門家の話では、地上には見て楽しむためのワインルームを造り、地下には昔ながらのワインセラーを造る人が増えているといいます。

上にも下にもワインセラーを造るとは、「いいとこ取り」でありながらなかなか贅沢な発想です。ワインそのものが生活の軸にある人が増えているという証拠なのかもしれません。

このようにワインを取り巻く環境は時代とともに変化しつつあります。伝統的なものも守りつつ、新しいものにも目を向けてゆきたいものですね。

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