やっかい者?ワインの味方?オリに関するあれこれ
日々、ワインの底に溜まりながら、高級ワインをさらに美味しくしてくれる酵母のオリ。
しかし、嬉しい事ばかりではありません。あまり量が多すぎると、舌にザラついたり、雑味が出たりするため、せっかくのワインの味を台無しにしてしまう事もあります。
オリがけっこう溜まってしまった高級ワインは、どのように飲めばいいのでしょう。
まず、グラスにオリが入らないように注ぐ方法は、2種類あります。
オリを立てないようにそっと注ぐか、グラスに注ぐ前に、一度デカンタ(食卓ビン)に移し替えます。
高級ワインのボトルは、オリが立ちにくい構造になっているので、前者の方法でも十分に使えます。特にオリがたくさん溜まったボトルに使われる後者の方法を、フランス語でデカンタージュといいます。
南西部のボルドーに属する人々がボトルを開けるときは、デカンタージュをするのが決まりとなっています。
ボルドーの上級物のワインは、ビン詰めされて5、6年以上も経てば、必ずけっこうな量のオリが出るためです。
しかし、東部のブルゴーニュ地方の人々は、デカンタージュをするのが嫌いで、滅多にしません。パニエ(籠)に寝かせておいて、そっと注ぐ簡単な方法ですませてしまいます。
この2つの地域の差は、いったいどこから生まれたのでしょう。
実は、それぞれの地域のワインから生じるオリの量や、質に違いがあるためだと言われます。
ボルドーのワインはオリの量がけっこう多く、中には泥のように溜まった物もあります。
対して、ブルゴーニュ地方のワインは、砂状質で、ビン底で塊になるため、ワイン自体をあまり濁らせないのです。
ヴォーヌ・ロマネの50年物を見ると、ボトルの底の方にオリが厚紙のように固まってしまっている物があったりします。これならうっかりオリを立ててしまうような心配はないでしょう。
ブルゴーニュの人々は、デカンタージュの事を、「ポート(ポルトガル産の酒精強化ワイン。年代物は、醸造所の樽のオリをそのままビン詰めする)を飲んでいた英国人の風習で、あんまりドロドロしていたから仕方なくやり始めたんだ」ぐらいに言っており、「ワインは少しぐらいオリがグラスに入っているぐらいがいい、むしろそれが本物のワインの味なんだ」と主張します。
確かに、それもひとつの飲み方だと思われます。
しかし、高級ワインの産地は世界中にあって、そのどれもにブルゴーニュ流の注ぎ方をする訳にはいきません。
うっかりオリを立ててしまうと、オリが再び沈殿するまで、一、二時間は待たなければ飲めないのです。
私たちがワインの上物や、年代物を味わう時は、やはりデカンタージュをして、オリを取り除いてから飲む方が安全と言えるでしょう。