白ワインに出る幻のオリとは?
ワイン作りの過程には、樽で熟成させる間に、何回かオリ引きという工程があります。
前項でお話ししたデカンタージュのように、樽を移し替える事で、底に溜まったオリを取り除いていくのです。
さらに、粘着性のある物質を投入して、ワインの中に残っているごくわずかなオリも残さず吸着し、沈殿させてしまいます。
高級ワインは、これに卵白やにべを使います。最近はガゼインなど、効率を高めるためにいろいろな清澄剤が開発されているそうです。
しかしボルドーのように、ビン詰めした後も長期に渡って熟成するワインは、こうした過程を全くしないか、ほとんど省いてしまいます。
ビンの中に酵母のオリをわざと残しておく事で、出荷後ビンの中でまた発酵がはじまるようにしているのです。
赤ワインの場合、ちょっと値段の高いワインを探せば、オリがある物はけっこう簡単に見つかります。しかし、たとえ同じくらいの値段でも、オリのある白ワインは、滅多に見かけません。
赤ワインと白ワインを比較すると、じつは赤ワインのほうがオリが出やすいのだそうです。これは、赤い方にはタンニンや赤い色素のアントシアニンなどが豊富に含まれているため、これらが結晶化して、オリとして沈殿しやすいためと言われています。
対して、白ワインのオリは、ビン底に白い結晶状の物として沈んでいます。これは、色素を含まない、ほぼ純粋な酒石酸と呼ばれるブドウ成分の結晶や、酵母の残骸でできたオリなのです。
これらは別名「ワインのダイヤモンド」とも呼ばれる、とても稀少なものです。
ステンレスタンクを使わずに、木樽で発酵させた物や、「シュール・リー」と呼ばれる、ワインをオリと一緒に一定期間寝かせておく醸造法を使った物で、こうしたオリが見かけられます。
ただでさえオリの残りにくい白ワインであるにも関わらず、オリが出てくるわけですから、よほどワイン成分が豊富な良質なブドウを使った物でなければなりません。そうでなければ、フィルターをほとんどかけていないか、という事になります。
いずれにしても、オリの沈んだ白ワインは、高級品である事の証明である、と言えるでしょう。