多少飲酒したところで筋肉の増減に影響することは無いという事実

最近というかここ数年「酒を飲むと筋肉が落ちる、つきにくくなる」などといった情報を目にするようになりました。

その理由として、アルコールが男性ホルモン「テストステロン」を減少させるということが挙がっています。しかし、こういうネットの情報はたいてい素人の無理解によって誤解され、捻じ曲げられて伝えられているのが相場というものです。

筋肉とテストステロンの関係

テストステロンは男性ホルモン「アンドロゲン」の一種で、男性の場合はそのほとんどが睾丸で作られ、副腎からもわずかに分泌されています。

男性ホルモンということで「女性にはない」などということを堂々と書いている記事もありますが、女性も男性の1/10程度ながら、卵巣や副腎からテストステロンを分泌しています。

逆に女性ホルモン「エストロゲン」は、男性の体内でも作られています。

テストステロンは主に思春期の男性に多く分泌され、男性らしい骨格を形作るとともに、性機能を発達させます。

成人では30歳を過ぎると少しずつ分泌量が減少していきますが、運動時には盛んに分泌されることも知られています。

運動時、分泌されたテストステロンは、骨格筋にあるアンドロゲンレセプターに結びつきます。レセプターとは特定の物質のみと結びつくことができるいわば鍵穴のようなもので、ホルモンはこのレセプターと結びつかなければ働くことはできません。

骨格筋のアンドロゲンレセプターにテストステロンが結びつくと、細胞の分裂が促進されます。これによって、使われた筋肉はより太く、強くなっていくのです。

女性の筋肉が発達しにくいのはテストステロンの分泌量が少ないためで、それを知れば、逆に吉田沙保里さんや三宅宏美さんが、あれだけの筋力をつくるためにどれだけの努力をしてきたかが想像できると思います。

ただ、当然のことながら骨格筋を強くするためにはテストステロンだけあればいいというわけではなく、筋繊維の原料になるアミノ酸が必要。そのためには、タンパク質と、タンパク質をアミノ酸に分解する代謝に関わるビタミンB6の摂取が必要となります。

ともあれ、骨格筋を強くするにはテストステロンの働きが大切だということはわかると思います。

アルコールはテストステロンを減少させる?

さてそうした基礎知識を得た上で、アルコールはテストステロンを減少させるという情報を見ると、いかにも飲酒は筋肉にはよくなさそうに思えます。

ではなぜこういう情報が出たのか?

これはどうも、アルコールの長期の大量摂取は睾丸機能を低下させるという研究結果から出たもののようです。

アルコールを摂取した場合の変化は大きく2酒類。

腸や胃から吸収されたアルコールが肝臓でアセトアルデヒドに分解されるところまでは共通しており、まず肝臓のアセトアルデヒド脱水素酵素が活性型の人の場合はアセトアルデヒドがさらに酢酸に分解された後、エネルギー源として利用されて最後には水と二酸化炭素にまでなって排出されます。

アセトアルデヒド脱水素酵素が活性型ではない人は、アセトアルデヒドが分解されないまま体内をめぐり、頭痛や動悸が起こります。

肝臓におけるアルコール分解は、一定時間内の処理量に限界があるので、その限界を超えた分のアルコールは血液によって全身に運ばれて、脳の機能を麻痺させたりもします。

男性の場合、当然睾丸にも血管が通っており、長期間大量のアルコールが運ばれてくると必要な酸素や栄養を受け取れず、細胞が萎縮し、睾丸機能が低下することがわかっています。

萎縮して機能が低下した睾丸は、テストステロンを上手に作ることができなくなってしまい、勃起不全などにもつながるおそれがあります。

つまり、飲酒によりアルコールが体内に入ると直接テストステロンと結びついたり攻撃したりして減らすというようなことではなく、「長く大量に摂取するとそういう結果になるよ」ということなのです。

そうした前提を無視して飲酒=即筋力低下というのは、あまりにも短絡的なこじつけ。

普通の飲酒では筋肉には影響しない

アルコールをどれだけの期間どれだけ摂取すると睾丸の萎縮が起こるのかというデータは見つけられませんでしたが、何年も毎日大量に飲むということをしなければそんなに心配するようなことではありません。

また、テストステロンは運動時に分泌され、筋肉で利用されるわけですから、仮にアルコールが直接的にテストステロンに影響を及ぼすとしても関係ありません。運動しながら飲酒する人はまずいないでしょう。

ましてや、アルコールのテストステロンに対する影響は直接的なものでも短期的なものでもありませんから、運動した夜に多少のお酒を飲んでもまったく問題はないわけです。

酒好きのお相撲さんやプロレスラーは多いですが、彼らがそのせいで筋肉が落ちたなんて話は聞いたことがありません。

もっとも、飲み過ぎて二日酔いになって、運動をさぼるということでもすれば、多少は影響するのでしょうけれど・・・。

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