お酒のカロリーのホント・ウソ

このまえ某キュレーションメディアをつらつらと眺めていて、ワインの中では赤ワインが糖質量が少ないので「ワインを飲みながらのダイエット」には赤ワインがベストチョイスだと書いている記事を見つけて盛大に吹きました。

そもそも「ワインを飲みながらのダイエット」ってなんだよと疑問に持つわけです。書いてておかしいと思わなかったのだろうか?ダイエットをしているなら、そもそも酒飲むなって話ですよ。

このように、最近の乱立するキュレーションメディアは粗製濫造記事ばっかりであんまり役に立たないんですよね。

「アルコール」のカロリー

さて、お酒に含まれる「アルコール」は、全てエタノールです。アルコールには他にメタノールがありますが、これは主に工業用に用いられるアルコールで人間は飲めません。

ジャッキー・チェンの『酔拳2』では、主人公の黄飛鴻が最終決戦で強敵と戦うためにメタノールを飲んで戦います。日本公開版では敵に勝った時点で終わりになっています。しかし、実は香港版にはその後の展開もあります。

決戦後、警察署長が黄家に行くと、飛鴻の姿は見えず家人が「彼は蒙古大夫」になってしまったといい、その後盲目になり狂人になってしまった飛鴻が現れて終了です。蒙古大夫というのはヤブ医者という意味で、転じて役立たずという意味になります。

私はこのラストシーンは、飛鴻が清国の玉璽や宝を守るために命がけで戦ったけれど、結局それも無駄になってしまったという皮肉だと解釈しました。

それはさておき、メタノールを飲用してしまうと黄飛鴻のように盲目になったり(本物のではなくあくまで『酔拳2』のキャラクターとして。実在の黄飛鴻はそもそも酔拳は使いません)、最悪の場合死にます。

現実にもメタノールを混入させた密造酒などで死亡事故が起こっています。

ということで、少なくとも現代日本に流通しているお酒に入っているアルコールは100%エタノールです。

醸造酒であるか蒸留酒であるかにかかわらず、お酒のエタノールの由来は原料の糖がアルコール発酵したもの。糖のカロリーは1gにつき4kcalですが、エタノールになると1gにつき7kcalとなります。

エタノールのカロリーはよく「エンプティカロリー」と言われます。

言葉の意味をきちんと忖度しない人は、字面だけを見て「人体に蓄積されないカロリーなので太らない」などといい加減なことを言っていますが、それは間違い。

「エンプティカロリー」は「0カロリー」という意味ではありません。単に栄養分がないカロリーという意味です。

通常、人体は胃と腸で糖類をブドウ糖=グルコースにまで分解して吸収しています。

吸収されたグルコースは、一部はグリコーゲンとなって肝臓や筋肉に蓄えられ、一部は細胞でエネルギーとして使われ、使い切れなかった分は脂肪として蓄積されます。

しかし、人体にはエタノールをグリコーゲンに変換する機能はありません。

加えて、アルデヒド脱水素酵素が活性型の人は、吸収したアルコールはアセトアルデヒドに分解された後に酢酸にされ、優先的にエネルギー源として使われます。

ですから、たしかにエタノールは糖より高い7kcal/gあったとしても利用効率がよく、太りにくいということは言えます。ただし、それにも限度があり、酢酸も消費しきれないと最終的には脂肪になります。

なお、アルデヒド脱水素酵素が不活性の人は、エタノールを体内で利用することはできず、気分が悪くなるだけなので意味がありませんから、飲まないほうがいいでしょう。

「お酒」のカロリー

お酒には蒸留酒と醸造酒があります。

蒸留酒は醸造酒から主にエタノールを取り出したものなので、基本的には水とエタノール、原酒から蒸発したわずかな有機酸を含むのみで無色透明。

ウイスキーについている色は、蒸留後につめる木樽の色が移ったもの。

蒸留酒の場合は、そのカロリーはほぼエタノール由来のものとなります。つまり、度数40%のウイスキーだと、大雑把に言って100mLで280kcalほどということになります。

一方醸造酒には、エタノール以外に糖やその他有機物が含まれるので、カロリーはエタノールよりもそれら有機成分由来のものが多くなります。

ワインの場合は、赤・白ともにアルコール度数はおよそ10%から15%程度。それ以外に糖や有機酸のカロリーが加わります。

一般的に含まれる糖質の量は赤ワインより白ワインが多いと言われます。googleで「赤ワイン 糖質」とググると100gあたり0.6g、「白ワイン 糖質」だと100gあたり1gと出るので、0.4gほど白ワインほうが多い。

ただ、仮に1リットル飲んだとしてもその差は4g。誤差の範囲と言っていいでしょう。この含有量は当然のことながら銘柄によっても、あるいは製造年によっても変わってくるはず。

ロゼワインの場合は、製造途中で蒸留酒を加えてアルコール度数を高めるとともに、糖質も残しているので、エタノール+糖でカロリーも高めになります。

お酒のカロリーを気にしても仕方ない

とまあ、これまでお酒のカロリーについて論じてきましたが、こんなものに雑学以上の価値はありません。飲酒時に問題になるのは、当然のことながら食事、もしくはおつまみのカロリー。

特に飲酒時は、アルコールという人体にとっての「毒」の分解が優先されるため、酢酸が大量に作られます。

その結果、料理などから得られた糖や脂肪などの消費は後回しにされ、まず酢酸がエネルギー源として使われます。

そのため、同じものを同じ量食べたとしても、お酒が入っているほうが食べたもののカロリーは蓄積しやすくなるのです。

しかし、何も食べずにお酒だけ飲むのはまったくおすすめできませんから、飲むならば何かをお腹に入れることになります。

飲んで食べた後に運動するという人はまずいないでしょう。そのまま寝たらさらに余剰カロリーは脂肪として溜め込まれます。

ですから、ダイエットしているならそもそも酒の種類によるカロリーなど気にせず、最初から飲まなければいいんです。

ダイエットに成功してから、たまに飲み食いする程度なら問題ないでしょう。その程度の分別さえつかないから、いつまでたっても痩せられないのではないでしょうか。

関連記事

ページ上部へ戻る