ワインの酸化防止剤が毒だなどという都市伝説について

世の中には「添加物」を絶対許さないというタイプの人がいます。

そういう人たちは、添加物は化学合成された不自然なもので、必ず体に悪影響を及ぼすと喧伝するのが好き。

そして、こういう連中が根拠なく騒ぐのを耳にして、思考停止して鵜呑みにするタイプの人もいます。そういう連中は、「添加物」が入っていると逆に根拠なく非難をしだすわけ。

ワインについてもその調子でターゲットにされているものがあります。

それが「酸化防止剤」。

日本では別ですが、きちんとした「ワイン法」を持つEUやアメリカでは、ワインとは「新鮮なぶどうの汁が原料であること」という明確なルールがあります。

新鮮なぶどうの絞り汁は、放置しておけば当然酸化することになります。切ったりんごを放置しておくと、切り口が茶色くなるというあれです。

りんごの切り口の酸化は塩水をつければ防げますが、ワインに塩を混入するわけにはいきません。そこで使われるのが「酸化防止剤」。

酸化防止剤には「亜硫酸塩」が使われます。「亜硫酸塩」でググると、まあその危険性を訴えるブログなどがわんさかヒットします。

そして、毒性が強いなどと主張しています。

しかし、その手の主張の大部分は、それがどれだけ含まれており、どれだけ摂取すると危険なのかを明示せず、ただ含まれていることのみが危険であると言い張るという点で共通しています。

ごく少量でも危険な物質は毒として扱われ、食品添加物として使われることは許されていません。しかし、大量に摂取せねば体に影響を及ぼさないものは食品添加物としての使用を認められています。

日本でワインに添加できる亜硫酸塩の量は標準的な750mLボトルのワイン1本につき、最大0.2625g。

ワインには水より比重が軽いアルコールが含まれるので、750mL=750gとは言えませんが、含まれるアルコール分はせいぜい15%なので、重さが変わったとしても誤差の範囲でしょう。

最大0.2625g入っていたとしてもその分量はわずか0.035%。

しかし、そのわずか0.035%の亜硫酸塩がワインに対しては非常に大きな役割を果たします。

まず、「酸化防止剤」の名前の通りワインの酸化を防ぎます。

醸造酒はアルコール発酵によってアルコールができると、不要な雑菌などが死にますが、アルコール発酵する過程でまだアルコールが足りない状態だと、雑菌によって腐敗することがあります。

日本酒では日本酒の醸造過程で腐らせてしまう「火落ち菌」が知られています。

ぶどうの絞り汁が原料であるワインは糖や有機物が豊富であるために、日本酒よりも更に腐りやすいのですが、亜硫酸塩を添加するとワインを腐らせるバクテリアや、カビの菌なども殺してくれます。

さて、カビの菌と言うと、今度は「なんでカビの菌が混入するんだ、衛生的に不備なせいではないか」などと発狂する人もいると思うので一応付け足しておくと、カビの菌など土壌のどこにもで存在しますし、空気中のどこにでも漂っています。

目に見える形にまで増殖するのは、湿度などの条件が整っているときだけ。

また、亜硫酸塩は、アルコール発酵の過程で発生するアセトアルデヒドと結合し無害化します。アセトアルデヒドを無害化した亜硫酸塩は自身もまた無害に。

要するに、ワインが完成した時点で含まれている亜硫酸塩は、そのほとんどが無害な形になっているものであり、その含有量も無視していいレベル。

もちろん100%無害になっているとは言い切れませんが、その分量はわずか0.035%含まれる亜硫酸塩のさらに一部に過ぎません。また、亜硫酸塩は体内に入ると肝臓で分解されて無害になり、蓄積することはまずありえません。

仮に、体に悪い影響になるだけの亜硫酸塩をワインから摂取しようとするならば、その影響を受けるまえに確実にアルコール中毒になるでしょう。「ワインには亜硫酸塩が含まれているから危険だ」と騒ぐのがどれだけ無意味なことだか理解できると思います。

さて、ワインが危険だと騒ぐ記事であるものが推奨されていました。それは「亜硫酸塩無添加」のワイン。添加物が危険だと騒ぐ人ほど「無添加」という言葉に弱いですね。

では、この「亜硫酸塩無添加ワイン」とはいかなるものでしょうか?実はこのワインはEUやアメリカでは「ワイン」として売ることができません。なぜならば原料が「濃縮還元果汁」だからです。

つまり元の果汁を濃縮したものを水で元の濃度まで薄めたもの。「亜硝酸塩無添加ワイン」はこれに糖分を加えて醸造しています。

まず水で戻す前の濃縮果汁というのは、果汁を加熱して水分を飛ばしてあるもので、その時点でバクテリアなどは死んでいます。さらに、それを元につくられた「亜硫酸塩無添加ワイン」は、加熱処理しているために亜硫酸塩を添加する必要はないのです。

さて、その「亜硫酸塩無添加ワイン」果たしてワインとして推奨していいものなのでしょうか?

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