酒造りに欠かせない水の節約が緊急課題になってきている昨今
最近の日本は訴訟王国というか、なんでも裁判に訴えれば勝てると思っている人が多く、本当に息苦しい国に成り下がったものだと思います。
もっとも、司法はそこまで愚かではないため、訴えたところで起訴などされないことも多い上、当然のこと原告が必ず勝つというわけでもありませんが・・・。
さて、訴えれば勝ちと思っている人に、日本酒には水が加えられていると言ったら「インチキだ訴えてやる」とか言い出すのでしょうか?
現在市販されている日本酒のアルコール度数は15%程度。しかしこれは醸造したお酒に水を加えて度数を薄めたもの。薄めていないものは「原酒」と呼ばれます。
ただ、水を加えて度数を調整するのが日本酒の伝統であり、法律でも認められているため、訴え出たところで相手になどされません。そもそも米が原料の日本酒は醸造の時点でも水を加えねば飲料にはなりません。
醸造で使う水、加水に使う水、その他瓶やタンクの洗浄など、酒造りの全ての工程で使われる水は、原料の米に対してなんと50倍にもなるといいます。
一方ワインは液体であるぶどうの絞り汁が原料なので、まともなワインには水は加えません。
まともではないワインというのは、日本で作られている輸入濃縮果汁を水で薄めて原料にしたもの。濃縮果汁を薄めて作った酒は、ワイン法が整備されている欧州やアメリカではワインとは認められていません。
そんなワインでも、やはり製造工程では醸造用の樽の洗浄などに大量の水を必要とします。
また、米農家から米を仕入れるのがほとんどの日本の酒造と違い、多くのワイナリーでは自ら育てたブドウを原料にしています。ブドウは他の果物や野菜を育てるのよりは少ない水でいいとはいえ、まったく水やりしなくても育つというものでもありません。
ブドウ栽培も含めたワイン造りに使われる水の量は、原料のブドウに対して5倍必要だと言われています。日本酒に必要な原料に対して50倍もの水よりはかなり少ないとはいうものの、ワイナリーの規模が大きいほど使う水の量が増えるのは当然。
その水問題で頭を悩まされているのが、カリフォルニア州のワイナリー。カルフォルニアはここ数年干ばつが続いており、必要な水の量を確保するのが難しくなっているそうなのです。
そこで、一部のカリフォルニアのワイナリーでは、節水のための様々な技術を導入しています。
例えば樽の洗浄に蒸気を使うことで水の量を抑えたり、ブドウの水やりには浄水システムで排水を無害にした水を使ったりなど。そうした努力の結果、使う水の量を半減できたといいますからかなり優秀。
日本は水が豊かな国だと言われていますが、実際のところ気候の変動によってダムの渇水が起きていたり、水はあっても汚染されていて使えなかったりといった問題があります。
今からカリフォルニアのワイナリーにならって節水技術を導入しなければ、将来的に日本酒やワインを作るのが難しくなってしまうかもしれません。