ワインを熟成させるとおいしくなるのはどうして?

世の中にはいろいろな食べ物に賞味期限が設定されていますが、これを読んでいるみなさまはその期限を守っているでしょうか?

私は「消費期限」はともかく、賞味期限であれば、多少過ぎていても気にせず食べる派。

また、タマゴなどはシールや殻への直接印刷で賞味期限が記されてますが、あれは単に「生食」での賞味期限であって、冷蔵庫に保存しているのであれば、購入後1ヶ月ぐらいのタマゴでも加熱調理には使えます。

ところで、世の中には賞味期限が存在しない飲食物もあります。よく知られているのがアイスクリームとワインです。

アイスクリームは当然外に出しておけば溶けて食べられなくなってしまうため、保存は冷凍庫で行われるわけです。そして、冷凍庫に保存されたアイスクリームは、腐敗などの心配はないので賞味期限が設定されていません。

ではワインのほうはというと、これは銘柄によって長期保存するようなものもあるので、明確な賞味期限は決めようがないために設定されていないということのようですね。

ただ、冷凍保存で変化の少ないアイスクリームと違い、基本的に常温保存。常温保存のワインは時間が経つにつれ成分が変化します。

ワインは日本酒やビールと同じく醸造酒の仲間ですが、醸造酒の中でも特に有機成分を多く含むので、長い間に分解されたり結びついたりして味が変わります。

そもそも熟成って?

そもそもワインの熟成ってなんでしょうか?よく言われるのは「角が取れて丸くなる」という表現。

確かにそれでもイメージ的にはおいしくなったように感じられます。ただ、冷静に考えると意味不明ですし、どうしてそうなるのかもわかりません。

ワインの熟成は、醸造した後のタンクや樽に詰められた状態での熟成と、瓶詰めされた後での熟成に分けられます。

まず、醸造所では発酵させたワインを一定期間ステンレスのタンクや木の樽などに保存し、熟成してから瓶詰めして出荷します。

これは、発酵が終わったばかりのワインは、味の成分がうまく混じり合っていないので、それを落ち着かせて「製品」のレベルになるまで待つという意味があります。

また、このときに「澱」といわれる不純物を沈殿させます。

その後瓶詰めをするわけですが、瓶詰めして栓をしたワインボトルの中では、コルクを通してわずかに入る酸素によって酸化反応が起こり熟成するのだとか。

逆に酸素がほとんどない環境で還元反応が起こり熟成するのだとか、いろいろな意見があってよくわかりません。

ただ、はっきりとわかっているのは、まず渋みのもとであるタンニンが酸化すると「重合」を起こして沈殿するために、渋みが弱まって丸い味になること、そして、エタノールと有機酸が反応することで「エステル」という物質が生まれ、このエステルが香りを高めるということです。

とはいっても、ワインがなんでもかんでも長く熟成させたほうががおいしいというわけではありません。熟成に合ったものと合わないものがあります。

そのポイントは、タンニンとアルコールの量。まず、アルコールは単純に殺菌力があるのでワインの腐敗を防ぎます。それとともにエステルが増えて香りもよくなります。

タンニンは上記のように酸化すると重合を起こすのですが、これはつまりワインの中にある酸性成分と結びつくとくっつき合って、ワインの中に混ざっていられなくなり沈んでいくという反応で、ということはタンニンが多いとそれだけそのワインは酸化しにくくなるわけ。

アルコール度数が高めで、タンニンが多いワインは、長く熟成させると香りがよくなり、味がマイルドになります。ただしそれは、熟成させないうちに飲んでもあまりおいしくないということでもあります。

また、たまに沈没船の中で発見されたワインが試飲されるなどということもありますが、それがとびきりおいしくなっていたという話はあまり聞かないですね。

ワインは適切な環境で適切に熟成させ、それでも10年から15年ぐらいが限度で、20年を過ぎると熟成を過ぎて劣化するものがほとんどだと言われています。

適切な環境というのは、ワインの中でゆっくり化学反応が起こりやすい13度から15度程度。それ以下の温度だと化学反応は起こらず、それ以上だと今度は熟成が早まりすぎます。

また、ワインの長期熟成はプロでも難しいそうなので、通年涼しい洞窟の貯蔵庫を持っているなどという特殊な条件の人でないのなら、自宅でワインを熟成させてみようというのは、好奇心を満たす以外の目的ではやらないほうがいいでしょう。

なお余談ですが、よく熟成にまつわることで、ボジョレーヌーボーがろくに熟成させていないからおいしくないというなら、熟成させたらおいしくなるのかという話を目にします。

でも、ボジョレーヌーボーは原料のぶどうをつぶさずに作るのでタンニンがほとんど含まれておらず、そもそも最初から熟成させる目的では作られていないため、どれだけ適切な環境に置いたとしても熟成によっておいしくなったりはしません。

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