アルコールの作り方とワインの度数について

日本にはワインに関するきちんとした法律がありませんから、ぶどう以外の果物で作った醸造酒も「ワイン」として売っています。

例えばアサヒグループは子会社のニッカウヰスキーが製造している「アップルワイン」を販売しているし、三鷹市は「キウイワイン」を販売しています。

しかしよく考えてほしいのですが、もし外国で米以外の穀物を原料とした醸造酒が「清酒」として売られていたらどうでしょうか?

日本の酒税法においては「清酒」を、「米、米こうじ、水を原料として発酵させてこしたもの(アルコール度が22度未満のもの)」ときちんと定義しています。

一方EUやアメリカには、ワインに対する厳格な法律があり、ぶどう以外を原料とした醸造酒をワインとして売ることができません。

「スシポリス」騒動のときに、日本は自分たちは外国の料理を勝手にアレンジしているのに、外国に対して自分たちの料理をアレンジするのは許さない偏狭な国だと批判されました。

現在外国で米以外の穀物でつくった醸造酒を「日本酒」として売っているということは聞きませんが、もしあったとしたらこの件に関しても日本人はワインと言えない酒をワインとして売っていることは棚に上げて批判するのでしょう。

さて、EUの法律に従えば、あるいは日本以外の世界の常識に従えば、ワインとはぶどうを原料にした醸造酒。

しかし、製造方法やぶどうの酒類によってアルコール度数には幅があります。まずどうしてそうなるのかから考えていきましょう。

アルコール発酵についておさらい

醸造酒、蒸留酒にかかわらず、酒類はアルコール発酵を利用して作られています。アルコール発酵とは、簡単に言うと酵母が糖を分解してアルコールを作り出すこと。

アルコール発酵は嫌気的環境、つまり酸素が含まれない状態で行われます。酵母とは、真菌類の一種。真菌類というのはカビのこと。カビの仲間のうち、人間が発酵に利用できる都合のいいものが酵母と呼ばれています。

アルコール発酵に使われる糖は、厳密には直接アルコールになるわけではありません。

糖はまず酵素によってピルビン酸という有機化合物に分解されます。酸素が少ない嫌気的環境では酵母が働き、ピルビン酸から二酸化炭素を分離させてアセトアルデヒドが作られます。

アセトアルデヒドはアルコール脱水素酵素がNADHという補酵素の働きかけによってエタノールに変換します。

糖からアルコールが作られると、同時に二酸化炭素も発生。その二酸化炭素も逃さないように発酵を行ったものがビールやスパークリングワイン。

例えば日本酒の場合は、まず蒸した酒米に麹を加えることでデンプンを糖に分解し、できた糖を酵母でアルコールにします。

米をデンプンに分解するのがアスペルギルス・オリゼーというコウジカビ、作られた糖をアルコールにするのがサッカロマイセス・セレビシエという酵母。日本酒づくりではこの過程は同時進行で行われるので「並行複発酵」と呼ばれています。

ワインの場合はわざわざ原料を糖に分解しなくても、ぶどうに含まれる果糖が利用できます。

そもそもアルコール発酵を担う酵母は自然環境の中にも存在するので、ぶどうの絞り汁は放置しておいても勝手に発酵します(日本では許可なくアルコールを作ることは禁じられているので故意に発酵を行うのはやめてください)。

ぶどうを食べていると、時に酔うほどではなくてもアルコールっぽい味がする粒が混じっていることがありますが、これは流通や店頭に置かれている間に空気中に漂う酵母がついて発酵を行ったためです。

現在でも自然の酵母を使っているワイナリーは存在します。ただし、自然に存在するアルコール発酵を行う酵母は一種類ではないので、自然酵母では品質を安定させるのは難しいことです。それゆえに、現在ではほとんどのワイナリーが培養酵母を用いています。

ワインのアルコール度数はブドウの糖度に依存する

アルコール発酵は糖を用いて行うわけですから、醸造酒のアルコール度数は原料に含まれる糖の量によっても変わります。

デンプンのかたまりである米を使う日本酒とは異なり、ワインはぶどうという農産物に含まれる糖を利用するので、そのぶどうのできによってアルコール度数はある程度左右されます。

また、原料ぶどうの品種によってもアルコール度数は変わります。ワインの原料ぶどうは食用ぶどうよりも糖度が高く、さらにその糖を凝縮させるために極力水やりをしないように育てられます。

有名な貴腐葡萄は、そうして育てたぶどうがさらにカビによって水分が抜けて糖度が上がったもの。

日本のワインを代表する山梨のワインは、甲州ぶどうを原料とすることで始まりました。甲州ぶどうは本来食用なのでワイン用としては糖度が足りず、そのためアルコール度数が低めのワインができていました。

しかし、現在では品種改良やワイン用ブドウの移入などで糖度が高いぶどうも作られるようになっています。

もちろん、ワインは度数が高ければいいというわけではなく、酸味や渋み、甘みなど様々な要素によって個性が生まれていくお酒ですから、甲州ワインのアルコール度数が低いことは、品質的に劣っていることを意味しません。

むしろ甲州ワインは世界的にも高く評価されるようになってきています。

ワインの種類による度数の違い

日本酒のアルコール度数は10%から15%ぐらい。しかし、これはこのぐらいの度数になるように「加水調整」をしているためで、水を加えていない原酒はアルコール度数20%程度になります。

加水調整するのは別に薄めて量を増やそうとしているわけではなく、これが日本人の口に合う伝統的に選ばれてきた度数だからです。

一方ワインは加水調整は行いませんので、原酒がそのまま出荷されています。そもそも「ワイン」として売るためには加水は許されていません。

一般的なワインは、赤白関係なく日本酒と同じぐらいの10%から15%ほどの間。スパークリングワインが11%ほど、「甘口」といわれるワインで6%から12%程度のようです。

他に、各国のワイン法でどういう扱いになるのか不明ですが「酒精強化ワイン」というものがあります。

これは、大雑把に言ってワインの製造途中でブランデーやスピリッツなどアルコール度数が高い酒を投入したもの。そのため、アルコール度数は普通のワインより高めの18%から20%ほどになります。

世界の三大酒精強化ワインと言われるものに、ポルトガルのポートワインとマディラ酒、そしてスペインのシェリー酒があります。度数の高い酒を加えるのはアルコール分を増やして保存性をよくするため。

現代のように保存技術や流通が発達していなかった時代。特に船で長時間ワインを輸送するようなときには、こうして保存性を高めておかないと酢になってしまったり腐ってしまったりしたのです。

このうち、ポートワインにはブランデーが使われています。ブランデーはワインを蒸留した酒で、度数は40%ほど。

発酵途中のまだ果糖が残っている段階でブランデーを加えると、アルコール度数が高くなったことにより酵母が死に、発酵が止まるので、ぶどうの甘さを残した酒になります。

よく、甘いポートワインが“意外にも度数が高い”と書いてあるものを見ますが、製造法を知っていれば意外でもなんでもないことがわかるはずです。

マディラ酒の場合、ぶどうが原料の中性スピリッツが加えられます。スピリッツというのは複数回蒸留してアルコール成分を高めたもので、原料のエキス分が2%未満のものを指します。

ぶどうを原料とした中性スピリッツは、要するにブランデーをさらに数度にわたって蒸留し、アルコール度数を95%ほどにまで高くしたもの。

マディラ酒は、ポートワイン同様発酵途中でスピリッツを加えた甘口のものと、発酵が終わってから加える辛口のものがあります。

シェリー酒は白ワインを醸造した後に、これもぶどうが原料のスピリッツを加えます。

“酔う”という体のシステム

このまえ、ワインがビールより酔いやすいのはアルコール度数が高いからなんです(ドヤァ)みたいな記事を見て盛大に吹きました。当たり前のことを書いてドヤ顔をする才能というのもあるのだなあと思ったものです。

消化というのは、タンパク質、糖、脂肪など分子が大きいものを小腸が吸収できる大きさにまで分解すること。この点、アルコールは分解せずに吸収できるので消化の過程を経ることをせずに大部分は小腸から、一部は胃から吸収されます。

吸収されたアルコールは肝臓に運ばれて分解されますが、分解しきれなかった分は血液とともに全身をめぐります。

脳の血管には「血液脳関門」という不要なものを通さないようにする門があります。しかし、アルコールはその門を通過して脳細胞に達し、機能を麻痺させます。これが“酔い”の状態。

酔う程度は血液中のアルコール濃度によって変わります。つまり、度数が高いお酒を飲めば、それだけ酔いやすくなるのは当然。

ただ、脳に入ったアルコールも当然また血液とともに肝臓に運ばれ、いずれ分解されて酔いが冷めます。

ただしこれはアルコールから分解されたアセトアルデヒドを分解できる能力を持った人の場合。

アルコールは肝臓でアルコール脱水素酵素によってアセトアルデヒドに分解され、アセトアルデヒドはアセトアルデヒド脱水素酵素によって酢酸になり、酢酸はエネルギー源として利用されて二酸化炭素と水になって排出されます。

ところが、アセトアルデヒド脱水素酵素が不活性のタイプの人はアセトアルデヒドが体内をめぐり、頭痛や吐き気などを催します。人体にとってアセトアルデヒドは危険な毒なので、分解できない人はお酒を飲むべきではありません。

いずれにせよアルコール度数が高ければ酔いやすいのは当然のこと。ワインは日本酒と同程度の度数ですから、あまりぐいぐい飲まないほうがいいでしょう。

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