南国タイでもワインが造られてるのって知ってました?
ブドウというのはいわば救荒作物です。痩せて降水量が少ない土地でも育ちます。
特にワインの原料となるヨーロッパ種のブドウは乾燥を好むので、栽培する時は水を極力制限します。
フランスにはワイン用ブドウの栽培で水やりをしてはいけないという法律まであって、自然の降雨にまかされています。
降水量が多い日本はその点雨が多すぎるように思えるかもしれませんが、日本を代表するワイン産地の甲州市山側は、降水量が少ないので鎌倉時代からブドウ栽培が行われてきたのです。
それに、降水量で言うなら日本の大部分の土地はブドウに適正な量に収まっています。
ただ、栽培温度の問題があります。ブドウが好むのは平均気温が10度から20度ぐらいのところ。そして、土地の水はけがよくなければなりません。甲州市や長野など国内ワイン産地はそういう条件に合っているわけです。
そんなブドウが、熱帯の国で育つはずがない。普通はそう考えます。ところが熱帯のタイでブドウ栽培どころかワインの醸造に成功した人がいます。
タイといえばシンハービールが有名ですが、これは旧貴族ピロムパクディー家が経営しているブンロート・ブリュワリー社が販売しています。
タイでのワイン製造に成功したのは、その一族のピヤ・ピロムパクディー氏です。
ピヤ・ピロムパクディー氏の頭文字をとった「PBバレー・カオヤイ・ワイナリー」でワイン醸造に携わっているのは、シンハービールの醸造に関わっていた人物。
ビールの技術をそのままワインに転用できるわけではないでしょうから、おいしいワインをつくれるようになるまでには苦労があったのではないかと思われます。
ワインが栽培されているのは、バンコクの郊外にある森林地帯。ただし、熱帯雨林の中で育つ新品種を開発したというような話ではなく、その中にあるブドウ栽培に適した高原地帯で行われています。
この高原地帯の平均気温は20度程度、タイの平均気温を十数度下回ります。
また、栽培サイクルについても工夫がされています。フランスでは通常ブドウの収穫は10月頃に行われます。
しかし、ここでは年明けから3月ぐらいまでの間に行われます。これは、タイの気温が一番高くなるのが4月~5月だからです。
「PBバレー・カオヤイ・ワイナリー」のワインは、残念ながらまだ日本では販売されていません。しかし、現地へ行けばテイスティングツアーや、付属レストランでこのワイナリーのワインを味わうことができます。
本場のタイ料理とタイワインを合わせるのも貴重な体験かもしれません。