バチカンでワインの消費量が多いのは当たり前
世界一ビールを飲むのはどこの国の人だか知っていますか?
大部分の人はドイツを挙げると思います。私もそう思ってました。
ところが、「1人当たりのビールの消費量」で世界一なのは、ドイツのお隣チェコ。
しかも、22年の間不動の1位。
よほど詳しい人でなければ、チェコとビールが結びつく日本人はいないのではないでしょうか?
ではこれをワインにしたらどうなるか?こちらももちろんフランスなどというありきたりなものではなく、世界一はバチカンです。
バチカンが一人あたりのワイン消費量一位だということが報じられたとき、日本ではちょっとおかしな反応をする人がいました。
すなわち、キリスト教の聖地でなぜワインの消費量が世界一なのかというものです。
ここに、日本人がいかに宗教に対していいかげんな認識をもっているかがわかります。
戒律として飲酒を禁じている宗教はそれほど多くありません。イスラムと仏教、ジャイナ教、シク教ぐらいのものでしょう。ヒンドゥーでは明確に禁じられてはいませんが、「非推奨」という扱いのようです。
もっとも、戒律がゆるい中国の回族などには飲酒する人もいるし、日本の僧侶で戒律を守っている人など数%といったところではないでしょうか?
日本の神道はむしろお酒を神様に差し上げます。稲作と神道は密接な関連があるので、日本酒は神様に捧げるのにふさわしいし、そのお下がりを頂いて神様に感謝するわけです。
一方、キリスト教ではワインが非常に重要になります。
日本人は水はきれいで当たり前と思っていますが、ヨーロッパでは長い間生水は危険なものでした。そのため、アルコールによって殺菌されたビールやワインは安全な飲料として水がわりにされてきました。
聖書ではキリストが水をワインに変えたという奇跡も記されていますが、それは「水がお酒になってラッキー」というような意味ではないのです。
最後の晩餐では、キリストはパンを自分の体、ワインを自分の血だと言いました。ゆえに、キリスト教成立後パンとワインはキリスト教徒にとって特別なものになり、パンとワインをいただいてキリストとともにあろうとする食事を「聖餐」と称し大切に受け継いできたのです。
これも日本の記事にはおかしなものがありました。バチカンでは「聖餐」のときにワインを飲む習慣があるからワインの消費量が増えるのだというのです。
これも宗教への無理解の現れで、聖餐の時にワインを飲む習慣があるのではなく、パンとワインをいただくのが聖餐なのです。
国民の殆どが修道者であるバチカンのワイン消費量が多いのは、まったく意外なことではありません。