ワインは投機のタネにするようなものではない

日本には仏教が7世紀には伝わっていましたが、現代に至るまでその布教は成功していません。

「いや、日本人は遍く仏式で葬式を行い、寺に墓を置いているんだから広まっているじゃないか」という人が多分いると思います。それこそが、布教が失敗している証拠です。

なぜならば葬式や墓は本来仏教と何のかかわりもないものだからです。

日本に仏教は広まっていません。都合のいい部分をつまんで使っているだけです。その代表が「お布施」

日本人はおそらく「お布施」を宗教に対して支払う金銭的な捧げ物として理解しているでしょう。

しかし、本来「お布施」とは持てるものが持たざるものに与えるということです。お金がある人はお金を分け与え、食べ物がある人は食べ物を分け与え、知識がある人はお金を分け与える。

これが「お布施」の本来の意味ですが、日本にこの本来の意味の「お布施」はありません。

仏教の「お布施」と似た考え方はキリスト教にもあります。キリスト教には富は地上に積まず天に積みなさいという教えがあります。この教えが富豪による寄付という習慣を生み出しました。

資本主義や投資も煎じ詰めればキリスト教から生まれました。このへんは説明すると長くなるのでマックス・ヴェーバーの本でも読んで下さい。

投資というのは、宗教的な言い方にすれば持てるものが持たざるものへ資金を分け与え、それによって持たざるが持てるものへとなったときに、その利益を逆に分け与えるという相互的なものです。

一方投機というのは、機会に資金を投じるもの。株式で言えば株価が下がったときに買い、上がった時に売るという株価の変動のみを見て、自分の利益のみを追求するもので、そこには投資先の会社を育てようという気持ちはまったくありません。

本来株式とは投資するもの。しかし、日本で株式といえば、投機的な扱いで見られることがほとんどです。これもまた、キリスト教思想をもたずに都合のいい部分=金が儲かるということだけつまんでいるせいだと言えるでしょう。

投資はなにも株式にするものとは限りません。欧州には伝統的に「ワイン投資」というものがありました。その原点は、好きなワイナリーのワインを多目に買っておき、飲みきれなかっらその分は売って、また新しいワインを買う資金にするというなんとものんきなものです。

もちろん今はもっと大規模になり、ワイン投資ファンドまであります。出資者はファンドに資金を預け、ファンドがワイナリーのワインを樽で買い、その売上から利益が還元されるという仕組みで、ワイナリーも利益を確保できるのでwinwinの関係性だと言えるでしょう。

しかし、数年前からワイン相場が大きく変動しました。その大きな要因が中国人による投機的参入です。中国人は本来ギャンブル好きな民族です。しかし中共政権下でギャンブルは禁じられています。

改革開放後、株式市場が導入されると、中国人はギャンブル代わりに株に手を出しました。中国の株式市場が沸騰したのは「投資熱」ではなく「ギャンブル熱」のためです。中国人にも「投資」の概念はありません。

その後中国人は様々なものを投機という名のギャンブルの対象にしました。

例えば一時期はにんにく投機がはやりました。にんにくを大量に買い占め、品薄になって値段が上がったところに売りに出すというものです。

もちろんそんなものが長続きするはずがなく、にんにく価格は急速に暴落しました。今はお茶への投機などがあるようです。

金があまっている富裕層が、そうしたギャンブルの対象の一つとして手をだしたのがワイン投資です。へたをすればワイナリーの蔵ごと買い付け、自分では一滴も飲まず、値が上がったら売るということをしました。

日本にもワイン投資ファンドができたことがあります。この投資ファンドは、できたてで値段が安いワインを購入し、それが熟成されて値段が上がった時点で売るので確実に利益があがるという宣伝をして出資を求めました。投資詐欺のよくある手口で、実際このファンドは詐欺でした。

多くの日本人にとって投資=投機であり、ワイン投資のなんたるかを知らずにただ儲け話に乗せられた連中が騙されたわけです。他の投資詐欺の被害者同様自業自得です。

ワインというのは原料のブドウの時点でおおよそ品質が決まります。例えば1976年などは非常に降水量が少なく、そのためブドウの糖度が高まって凝縮され、味のよいワインが多く生まれた年だといわれています。

ワイン用ブドウは食用ブドウより糖度が高いわけですが、糖度を高めるには降水量と日照時間が重要になってきます。大雑把に言えば、降水量が少なく、ブドウが陽に当たる時間が長くなると糖度は上がります。

ところが近年、地球温暖化の影響で欧州でも気温が上がりすぎて十分な日照時間が得られないままにブドウが収穫時期を迎え、質の高いワインをつくれなくなっています。

ワインがおいしくなるのは熟成させるからではなく、質が高いワインを適切に熟成させることでおいしくなるのです。

ゆえに、現在は熟成前の樽を買ったところで熟成後に高い評価を得て価格が上昇し、それで儲かるということは起こりにくい。日本人が求めている投機的な投資にはまったく合わないのです。

別に投資の本義を知るためにキリスト教徒になれなどとはいいませんが、ワインぐらいはそんな必死に投機のタネにせず、それこそ好きなワインを買い込んで、たまたま飲みきれなかった分が高値になっていたら売るぐらいでいいではないですか。

本来の投資という意味で言うならば、ブドウ生産も含めて日本のワインを育てようとしているメルシャンを傘下におさめるキリンのような大手酒造会社や、いくつかの株式上場をしているワイナリーの株に投資して、日本のワイン文化を高める一助になればいいと思います。

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