日本のワイン業界の様々な問題点とは?
「和牛」と「国産牛」の違いをご存知でしょうか?「和牛」は日本の在来牛、あるいは在来牛と輸入種をかけあわせた牛の「種類」。
そして、「国産牛」は牛の種類にかかわらず日本国内で生まれた牛の「産地」を示します(荒川弘先生の『百姓貴族』を参照しています)
ワインもそれと似たような状況で、「国産ワイン」というのはあくまで日本国内で醸造されたという意味であって、原料が国産か輸入品かは問いません。
というより、現状では「国産ワイン」の80%は、原料に濃縮果汁を水で薄めたものを使っています。
EUにはワインに対する明確な定義と規則があります。
それによるとワインとは「新鮮なブドウ、またはブドウ果汁を発酵させたもの」であり、その原料を第三国から輸入することを禁じています。
また、原料に水を加えることは認められていません。
つまり、日本の「国産ワイン」なるものの80%は、EUの基準に照らせばワインとは言えない代物、単なる濃縮ジュース発酵アルコール飲料に過ぎないわけです。
日本には明確なワイン法がないために、こんなものが堂々と流通していますが、見方によってはこれは「偽造ワインです」。
これもまた日本特有の「ガラパゴス化」というものでしょう。
そこで政府は、今頃になって「日本ワイン」というブランドの制定をすることにしました。
これは、100%国産ブドウを使い、醸造からパッケージングまですべて日本国内で行ったワインにのみ認められるブランドです。
この基準は2018年より施工される予定。
ただ、これはガラパゴス化を解消し、国際ルールに準じるというタテマエの裏側に、「日本ワイン」ブランド化によって海外への輸出量を増やし、税収を増やしたいという国税庁の皮算用も隠されている様子。
とはいっても、現在の偽造品を堂々とワインとして売っても許される状況は改められるべきであることは間違いありません。
この流れには、現在既に純国産ワインを生産・販売しているメーカーからは歓迎されているようです。
その一方で、国内ワイン生産者が減るとして、懸念を示す業者もあるとのこと。
しかし、それは実入りがいい偽造品を国産ワインとして売りつけることができなくなることが心配なだけであって、そのような生産者が駆逐されることは、むしろ日本のワイン業界にとってはプラスになるはずです。
もっとも、濃縮ジュースを水で薄めて砂糖をぶち込んでつくった「ワインもどき」も酒税がかかるし、売れれば税収になるわけですから、国税庁が新たな分類を作ることにより、ワインとは別のアルコール飲料として存続できる可能性はあります。
まあ、そうなれば今までそんな「国産ワイン」をありがたがって飲んでいた連中も掌をかえして飲まなくなるのでしょうけれど。
ところで、国産ワインの80%が「濃縮果汁原料ワイン風アルコール飲料」になってしまう原因は、法整備ができていないからという他に原料不足も挙げられると思います。
フランスやスペイン、或いはアメリカ、オーストラリア、チリなどといった国外のワイン生産国は、ワイン産業を醸造だけではなくワイン用ブドウ生産を含めたものとして育成しています。
ところが日本ではもちろんそんなきちんとした取り組みはなされていません。
日本のワイン産業の中心である山梨県を始めとしたいくつかの自治体、或いはメーカーが独自に取り組んでいるのみであり、そうしたところでは生産された国産ワイン用ブドウは納入先が決まっています。
ゆえに、国内にルートがないメーカーは原料を海外に求め、偽造品を作るのです。
日本ワインを本当にブランド化したいのであれば、まずはワイン用ブドウの国内生産力を高めるのが最も重要なことのはず。
ルールだけ決めて、現実に即していないというのは日本の法律にありがちなことです。