「フレンチパラドックス」って何のこと?
約20数年前、日本が空前の赤ワインブームに湧いたことはご存知でしょうか?飲みやすいということから白ワインの消費量の方が多かった日本でも、店頭から赤ワインが消えるほど売れに売れました。
これは日本に限ったことではなく、アメリカをはじめ世界中にワインブームが広がったのですが、その元となったのは1992年にフランス=ボルドーの科学者が「赤ワインに豊富に含まれるポリフェノールが動脈硬化を防ぐ」と述べたことに端を発しました。
フランス人はバターや肉、フォアグラなど、乳脂肪や動物性脂肪を日常的に摂取しているにもかかわらず、心臓病や動脈硬化が少ないのは、赤ワインをよく摂取しているからだ、というものです。この考え方は「フレンチ・パラドックス(フランスの逆説)」と呼ばれました。
この後2010年に、名古屋市立大学院の研究チームが、赤ワインに含まれるポリフェノールの成分のひとつである「レスベラトロール」が神経細胞を活性化し、再生させるというメカニズムを動物実験で解明しました。つまり、適量の赤ワインを飲むことでレスベラトロールが胃を刺激し、海馬の認知機能を向上させる物質を体内で多く作り出し、そのことにより脳の働きが良くなる、ということです。
レスベラトロールとは、ポリフェノールの中で最も生理活性の高いものの一つと言われている抗酸化成分です。これはブドウが厳しい自然環境から自分の身を守るために作り出される物質で、黒ブドウの果皮に多く含まれるのですが、生食用のブドウは果皮を食べることが少ないために、ワインによる摂取が注目されています。
また赤ワインに含まれるポリフェノールは、近年よく耳にするアンチエイジングにも有効とのことで、日本の大学病院でも研究が進められています。
健康にもよく、美容にもよい、となると特に女性にとっては言うことナシの飲み物ですが、どの研究者も「適量のワインが良い」と述べています。「適量」は人それぞれでしょうが、「ワインは健康にも美容にもよい」という言い訳をして飲み過ぎるのは、避けたいところです。