日本人とワインの出会いと歴史、そして現在

ワインと日本人が初めて出会ったのは、宣教師フランシスコ・ザビエルが鹿児島にやってきた1549年のことでした。その時、薩摩の大名に献上されたのは、ポルトガル産の赤ワインで「珍陀酒」と呼ばれ、織田信長など時の戦国武将に重宝されたそうです。

日本でワイン造りが始まったのは明治維新後でした。その頃の日本は米不足で、日本酒製造で使用される米を減らしたかったという理由があり、ブドウ栽培やワイン製造が当時の政策として推奨されていました。

そこで欧米からブドウの苗木を輸入した政府は、フランス留学でワイン醸造を習得した日本人を山梨県に呼び寄せ、日本で初めてワイン製造を始めました。これが、日本最初のワイン製造会社として設立された「大日本山梨葡萄酒会社」です。ここから、日本でのワイン製造が少しずつ発展していったのです。

当時の日本人には、甘口タイプのワインしか受け入れられず、戦後になってやっと本格的な味わいのワインが造られるようになりました。

川上善兵衛という岩の原部堂園を開設した人物が、1891年(明治24年)に完成させた「マスカット・ベリーA」という品種は、日本の飲用ブドウ栽培の歴史に大きな足跡を残しました。

ブドウの生育期に雨量が多く高温多湿な日本の気候は、ワイン用のブドウ栽培には適していないとされてきましたが、近年の技術の発展により目覚ましい進歩を遂げています。

ここで、各産地の特徴などをあげておきましょう。

●山梨県
国内ワイン生産量第一位(総生産の3分の1)特に交付の勝沼はワインの産地として有名です。日本古来のブドウ「甲州」、「マスカット・ベリーA」は覚えておきたい品種。

●長野県
冷涼で昼夜の気温差が激しいのが特徴。生産量は山梨に続き第二位。フランスの伝統的なブドウ品種である「メルロ」の栽培で、塩尻の桔梗ヶ原は国際的に評価されている。

●山形県
生産量第三位。ブドウの生育期に雨量が少なく、国内ではブドウの生育に適した気候。

●北海道
生産量第四位。梅雨や台風がないのでブドウ栽培に向いている。ドイツ系の品種である「ケルナー」など、冷涼な気候に合ったヨーロッパ系の品種が主に栽培されている。

●その他
栃木、兵庫、岡山、広島、熊本、宮崎、大分にも、国産ブドウ100%でワインを製造している素晴らしいワイナリーが増加中。

日本には、EU諸国にあるようなワインの呼称や品質の保護を目的とした「ワイン法」が存在せず、栽培地域、醸造法、表示に関しての詳細な規定がありません。唯一存在するのは、国税庁が管轄する「酒税法」のみです。そのため、海外から「濃縮果汁」を輸入し、それを使用してワインを製造していても、国内で醸造すればそのワインは「国産ワイン」と謳うことが可能になります。

素晴らしい国産ワインを造る生産者のためにも、そしてワインを愛する消費者のためにも、早急な法整備が待ち望まれています。

関連記事

ページ上部へ戻る