「フォーティファイド・ワイン」ってどんなものですか?
ワインの中に「フォーティファイド・ワイン」に分類されるものがあります。「フォーティファイド・ワイン」とは酒精強化ワインとも呼ばれています。
醸造中のワインに40度以上のブランデーなどの蒸留酒を添加し、アルコール度数を15~22度程度まで高くしたものです。その結果、味にコクが出て保存性も高くなります。
代表的なものにスペインのシェリー、ポルトガルのポート・ワイン、マディラ、イタリアのマルサラなどがあります。またフランスでもヴァン・ドゥー・ナチュール(略してVDNとも表される)つまり天然甘口ワインの意味ですが、実はフォーティファイドしているものがあります。
これらのワインは、通常ワインと言えば連想するタイプからすると変り種のワインと言えるでしょう。
「フォーティファイド・ワイン」がどのようなものか、さらに説明するのに「マディラ」を取り上げてみましょう。このお酒はポルトガルのリスボンから南西に1000kmの大西洋上に浮かぶマディラ島で造られています。
始まりは偶然の所産でした。17世紀ごろ、アメリカ新大陸への航路上に位置していたマディラ島で積み込まれたワインが、赤道を横切る際に暑く、長い航海時間を経てみると独特の風味へと変化していたのです。
これはワインにとって大敵ともいえる酸化現象が特有の香り、味わいを造り出したのです。しかし、これだけではアルコールが加わっていませんから、まだ「フォーティファイド・ワイン」(酒精強化ワイン)とは言えません。
当初、赤道上を移動することによって天然の加温状況におかれてできたマディラワインでしたが、その後ジブラルタル海峡をめぐる紛争により、市場に運ぶための航路を失ってしまったマディラワインは、航路が復旧するまで島で貯蔵されることになりました。
その際ワインの一部を蒸留し、残りのワインに加えることで保存性を高めることにしました。
後にこのワインを飲んでみると、味わいが深くなることが発見され、ここにおいて「フォーティファイド・ワイン」(酒精強化ワイン)としてのマディラが誕生したのです。
後の時代には、赤道付近の長い航海によってワインに熱を加えマディラ酒独特の香りを出す方法にかわり、島内で人為的に加熱熟成させ造られています。この温めて熟成させる工程がマディラの特徴です。