ワインは名前や種類を覚えないと、楽しくないですか?
アレック・ウォー氏は、ワインを生涯の友として、ワイン・ブックの名著を書いた人で、そのウォー氏が、次のように書いています。
「もし私が、1945年のシャンベルタンをグラスに注がれて、銘柄を当ててみよといわれたとして……『ブルゴーニュですな。良いワインだと思いますが、すこし古いもののように思われます』と答えられれば、私としては上出来です……」
一生をワインに捧げたウォー氏でも、ワインの識別についての本音はこういったものなのです。
本当にワインを覚えているというのは「ワインの味を覚えている」ということを意味します。
人間はいわゆる「五感」を持っていますが、そのうち「味覚」というのは記憶しにくい感覚です。
「視覚」でいえば、絵画をかなり正確に覚えていることは出来ます。
「聴覚」も、聴いた曲のメロディを声で復元することが出来ます。
「嗅覚」も、いろいろな香りを記憶し識別することが出来ます。
ところが「味覚」のほうは、熟練者や、特有の本能を持っている人は別にして、普通の人はさっぱりなのが本当のところ。
数本のワインを試飲し、1週間後に同じワインを試飲したとして、どれがどれだったか当てられる人はそうはいません。
それに、ワインはともかく種類が豊富。
ですから、一人の人が世界に存在するすべての種類のワインを飲むということはできません。ワインを数多く飲んだ人が、ワインをよく理解している人とも限りません。
縁があって巡り会ったワイン、飲める機会のあったワインを、いかに飲み、いかに愛するかが問題といえるでしょう。