白ワインに大してデトックス効果が無い理由
日本に外国から新しい言葉が入ると、その言葉が持つ明確な定義が失われ、非常に観念的に用いられます。「デトックス」という健康法もその一つです。本来デトックス(Detox)は、意図せずとも体内に入ってしまった、もしくは蓄積してしまった重金属、化学物質などを、食生活や血流、発汗、排泄などを改善することで排除しようというものです。
ところが日本では「体の毒素を出す」という非常なあやふやな観念に変換され、使われています。しかもその「毒素」は何なのかという説明はほとんどありません。
その、日本的なあやふやな意味でのデトックスに、白ワインが有効であるという説があります。ここではそれを検証してみたいと思います。
有機酸が腸内環境を改善?
ワインには原料のブドウ由来のリンゴ酸や酒石酸といった有機酸が含まれます。赤ワインにも含まれますが、含有量は白ワインのほうが多いです。その有機酸が腸内環境を改善するので、便通がよくなるという主張があります。
有機酸が腸内環境を弱酸性に保ち、いわゆる「悪玉菌」を減らすというのは本当のことです。ただし、そもそも腸内のバランスが健全に保たれている状態では、善玉菌が乳酸や酪酸などの有機酸を作り出し、腸内PHを保っているのです。
病気やストレス、不摂生などで悪玉菌が増えると、有害な腐敗物質が増え、腸内環境が悪くなります。
正常な状態の腸に白ワインの有機酸が届けられた場合でも、悪玉菌が優位な状態に届けられた場合でも、白ワインに含まれる程度の有機酸が大勢に影響を与えることは考えられません。
腸内環境を改善するには、食生活や生活を改善するのが早道で、白ワインを飲んでなんとかなるものではありません。
カリウムが水分代謝を改善?
ミネラルの一種であるカリウムは、人体内ではナトリウムと対となって働く物質です。カリウムは細胞の浸透圧を正常に保つ機能があり、余分なナトリウムを排出します。現代人は塩分過多なので、体内のナトリウム量も増えがちです。そのため、カリウムを積極的に摂るのは健康のために大切なことです。
ワインにもカリウムは含まれます。それゆえに、ワインを飲むとナトリウムを排除し水分代謝がよくなるので、むくみの解消になるという主張があります。
同じ100gで比較すると、赤ワインには110mg、白ワインには60mgのカリウムが含まれます。白ワインがデトックスに有効であると主張する人は、赤より白のほうがカリウムが多いと言っている場合もありますがそれは大嘘です。ただ、カリウムが含まれていることは間違いではありません。
しかし、同じドリンクのカリウム含有量で比べてみるとどうでしょうか?例えば果汁100%のオレンジジュースには180mg、そしてトマトジュースには倍以上の260mg含まれます。飲み物以外だと、同じブドウが原料の干しぶどうは、水分量が非常に少なくなっているとはいえ100g中740mgものカリウムが含まれます。
つまり、ワインはカリウムの摂取源として効率が悪いのは明らか。
結論として、白ワインは日本的な意味でも本来的な意味でも、デトックスの効果はほぼ期待できないといっていいでしょう。