白ワインの色にまつわるうんちく色々
ワインの飲み方の基本は、まず色を眺め、香りを嗅いで、それから口に含むというものです。ここでは、まず始めの色についてのうんちくの色々を眺めてみましょう。
まず、白ワインと言いますが、決して絵の具の白のように「白い」わけではありません。そうかと言って、透明だとか無色だとか呼ぶのもおかしいです。ですから、伝統的に使われている「白」と呼ぶことになります。
普通、白ワインは白ブドウから造ります。また、シャンパンは基本的に白いブドウと黒いブドウの両方を使って造ります。ブドウを潰した直後の、果皮の細胞に含まれた色素が流出する前に果汁を抜き取ってしまえば、果汁自身は着色していないので白ワインができあがります。
しかし、シャンパンの中にも変わり者で黒ブドウを使わずに白ブドウだけで造るものがあり、これを「ブラン・ド・ブラン(白の白)」と言います。軽い味わいの高級品です。発泡性でもない普通の白ワインの中で、ブラン・ド・ブランと記載している品も見かけますが、マーケティング上のPRでしかなく全く意味がありません。
別の白ワインで、「ブラン・ヒューメ」という物があります。フランスのロワール河流域のヌーベルの近くで造られています。ヒューメは燻製という意味がありますが、いぶしたわけではありませんし、ブラン(白)と言っても透明です。色がついておらず、水を入れたグラスと並べると、区別がつかない程です。味は極辛口になります。
一般的な白ワインは、大体やや黄色っぽく、単琥珀色から黄金色までの色味の違いがあります。薄く若緑色っぽいものを英語では麦わら(ストロー)カラーと呼んでいます。
麦わらと言えば「麦わらの酒(ヴァン・ド・バイユ)」と言うものがあります。フランスの東北部のジュラ山脈地方のもの。摘み取ったブドウをわら(フランス語で「バイユ」)の上で干すことよりついた名前です。その地方には、色にちなんで名付けた「黄色い酒(ヴァン・ジョーヌ)」というワインもあり、両者ともに希少な逸品です。
世界中で有名な辛口白ワインと言えばシャブリです。シャブリは薄く緑色がかっています。緑つながりで言えば「緑のワイン(ヴィーニョ・ヴェルデ)」なるものがあります。ポルトガルの北部で造られています。
ポルトガル語で緑がヴェルデ、酒がヴィーニョになりますが、緑とついてもワインの色は普通の白と赤があります。名前の緑は新鮮なとか若輩などの意味からついています。一方、フランス語では緑の
ワインというと、若い酸っぱくて飲めないようなワインを指します。
色にちなんだ名前で面白いものを挙げてみると、「雷鳥の目(ウイユ・ド・ペルドリ)」は色由来の名前で、スイスのフランス語地帯のヌーシャテル辺りのワインです。同様に色由来の名前のものに「玉ねぎの皮(ブリュール・ドニヨン)」があり、ロゼワインに近い色をしています。
カルフォルニアの新しいワインで日本にも入ってきたものに「ブラッシュ・ワイン」というのがあります。Brushは赤面するという意味で、赤ブドウから造った白ワインでほんのりピンクの白ワインです。ホワイト・ジンファンデルと記載しているものもあります。
白ワインであるのに色がとても白とはいえないものもあります。ドイツのライン・モーゼルやブルゴーニュ・ワインの高級品で少し年数が経ったものは、黄金色に輝いています。
白ワインは、大抵老化すると褐変して変な味になってきます。これを「ランシオ化」と言います。そもそも、一段と古味を課して、熟成味を持たせたワインから生まれた表現で、南仏の天然甘口ワイン(ヴァン・ド・ナチュール(天然と言っても少量の加糖をする)などやイタリアのシシリー島のマルサラ酒などがこれに当たります。
褐変して味がおかしくなったことを示すのに「マデイラ化」と言うもう一つの表現もあります。これは、大西洋の真ん中の北アフリカの西モロッコ沖にあるマデイラ島のワインから来ています。マデイラ・ワインの色は濃い茶褐色で、味は変わっていますが絶妙なワインです。
白ワインの色の経年変化を知るのに好例なのが「シャトー・ディケム(イケム)」です。世界の甘口白ワインの中で一番気品が高く有名です。このワインは驚く程寿命が長く、10年から15年頃から飲み頃となり、30年、40年となると秀逸な熟成を遂げます。
色は、初めは黄色が濃くなっていくだけですが、段々深い黄金色となり、その上濃く美しいオレンジ色となります。さらに進むと褐色を呈し、薄い焦げ茶色から濃い焦茶色に変わります。一般的なワインであれば、ここまで色が変わったら飲めるようなものでは無くなっています。
しかし、イケムではこの段階まで来ると神秘的な味わいに変わるのがとても不思議です。収穫年により、この色の変化は違いがあって、早いうちから褐色になる年もあれば、ずっと黄金色やオレンジ色が続く年もあります。