ロゼワインの世界的流行で日本だけガラパゴス化へ
日本人はカテゴライズが大好きな民族。しかも、そのほとんどがまったく意味がない自己満足的なカテゴライズで、要するにカテゴライズしている風をよそおって、自分たちを一つ上のレベルにいると妄想して、その下を見下したいわけです。
例えば先日、60代ぐらいの広島在住の男性がこんなことを言っているのを聞きました。
『はだしのゲン』は漫画だというのでバカにして読まなかったけれど、広島市長がオバマ大統領に英語版を贈ったというのを聞いて読むようになり、人にすすめるようになった。
『はだしのゲン』というのは40年以上前に発表された作品。学校の図書館にも収蔵されていました。
それを、その男性は広島在住にもかかわらず「漫画だから」というだけで目も向けずにいたわけ。
60代ぐらいだと、漫画を一段下のものにカテゴライズして「漫画を読まない自分かっこいい(ドヤァ)」などと浸っている人は多いですね。
それがオバマ大統領に贈られたからと手に取るのもまた恥の上塗りではないかと思いますが・・・。
ロゼワインの消費量は増加傾向
でまあ、なんでこんな話を持ち出したかというと、ワインの世界にもそういうふうに一段見下されてきた存在があるから。
それはロゼワイン。
ワインの専門家によると、日本ではあまりロゼワインが売れないということで、その原因はロゼワインを「初心者向け」「女性向け」だと思っている自称ワイン痛、もといワイン通が多いからだそうです。
つまり「ロゼワインを飲まない自分かっこいい(ドヤァ)」と、勝手に他者を見下して偉くなった気になっているということですね。
その上女性のことまでバカにするようなことを言っているわけですから恥ずかしいことこの上ありません。
実は現在、世界的にはロゼワインの消費量がどんどん増えていっています。フランスではすでに白ワインの消費量を抜き、調べてみると、2008年にはもうこの傾向が始まっていた模様。
日本でも日本酒離れなどということが言われていますが、フランスでもワイン離れなどが起こっており、全体的なワインの消費量は減少の一途をたどっているとのこと。
そんな中で逆に消費量を伸ばしているのがロゼワイン。
2008年の時点でワイン全体の消費量の20%、その8年後の2016年には、30%を占めており、今後さらに増加すると見られています。
ロゼワインのつくりかた
実はロゼワインは明確な定義が難しいワイン。
「ロゼ」というのはフランス語で「バラ・バラ色」を意味し、綴は英語のローズと同じ「Rose」。
色を指す場合はピンク色のことで、ロゼワインは外見的にピンク色であるのは共通していますが、その製法にはいくつかの種類があります。
1.マセレーション法
ロゼワインの製法として一番多いのがマセレーション法。
原料に黒ぶどうを使い、途中まで赤ワインと同じ醸造過程をたどります。赤ワインの色は黒ぶどうの皮に含まれるアントシアニンが溶け出たものなのはよく知られています。
ロゼワインの場合は、ある程度色がついてから皮・果実・種子を取り除いたのちにさらに発酵を行うので、赤ワインほど赤くならずにピンク色に仕上がります。
2.セニエ法
赤ワインを醸造している過程で、味や色をより凝縮させるために液体部分を抜き出す方法。
ロゼワインの作り方というよりは、赤ワインの製法の一つとなります。
そのセニエ法によって抜き出した液体のほうをさらに発酵させるとロゼワインができます。
3.直接圧搾法
白ワインは、白ぶどうを絞った液体のみを使って醸造を行いますが、それの黒ぶどう版。
黒ぶどうの場合、皮ごとしぼるとある程度色素も流れ出ます。それをそのままワインとして醸造すると、ピンク色のロゼワインになります。
4.混醸法
黒ぶどうと白ぶどうを混ぜて、赤ワインと同じ作り方をするものです。
5.白ワインと赤ワインのブレンド
EUでは法的に白ワインと赤ワインをブレンドすることは禁じられています。
しかし、シャンパーニュでは伝統的にワインを調合する技術が伝わっており、それがシャンパーニュのワインの特徴でもあるので、例外的にシャンパーニュ地方でのみ白ワインと赤ワインを混ぜたロゼワインをつくることが許されています。
このようにロゼワインのいくつかの作り方を見ていくと、その方法だけではなく原料も黒ぶどうだけのものから白ぶどうもまざっているものまであり「ピンク色」のワインである以外には定義しきれないというのもわかると思います。
また、ロゼにも甘口のものも辛口のものもあります。「ロゼは甘口だから女性向け」だなどと言っているワイン痛は、ろくにロゼワインを飲んだことがない半可通です。
それに、甘口=女性向けという決めつけもおかしいですね。辛口を飲むと偉いとでも思っているのでしょうか?
ロゼワインは肩肘張らずに飲むもの
ロゼワインを「初心者向け」と見下すのは愚かなことですが、長期熟成をしない比較的軽い飲みくちのものが多いので、ワインを飲み慣れていない人にも飲みやすいワインであることは確か。
確かにヴィンテージワインのようにお高くはありませんが、その分気軽に肩肘張らずに飲めるというのがロゼワインのよいところ。
また、ロゼワインは欧州でも白ワインのように冷やして飲むのが一般的で、それが日本同様それまでより暑くなっていている夏に飲むのにも合っているとして、レストランや自宅だけではなく、アウトドアシーンでも需要が拡大しているようです。
おそらく日本ではビールが担っているような部分をロゼワインが担っているということもあるのでしょう。
日本でのロゼワインの普及は?
海外の流行が日本に伝わってくるのは、だいたいその当該国での流行が落ち着いたり、廃れだしたころ。台湾のタピオカミルクティーや、雪花氷などが伝わってきたのもそんなタイミングでした。
ということで、日本でもやっとロゼワインに目を向ける人が増えてきているようです。
この流れには、近年日本でも安くてもそれなりに楽しめるスペインやアメリカ、チリなどのワインの販売量が増え、それまでかっこつけるためにワインを飲んでいたのとは違う層にもワインが普及していったということも関係しているかもしれませんね。