赤ワインにポリフェノールが含まれるとはいっても飲み過ぎは禁物

十数年前「ポリフェノールブーム」のごときものが起こったことがあります。これは、いわゆる「フレンチパラドックス」、つまり肉食を好み、喫煙や飲酒量が多いフランス人が、にも関わらずそれらの習慣が原因となる心臓病の発生率が低いのは、赤ワインに含まれるポリフェノールの効能ではないかという説が提示されたためです。

ただし、その後の統計の精査や研究などにより、そもそも統計的に見てフランス人の心臓病発症率がそれほど少ないという「フレンチパラドックス」そのものが否定されたり、ポリフェノールに心臓病を抑制する効果はないとする研究結果などが発表され、今では誰も赤ワインを健康増進の飲料として推奨する人はいません。

その後、アンチエイジングの意識の高まりから抗酸化力があるさまざまなポリフェノールが注目されてきたものの、ダイエット法などと同様一瞬騒がれては消えるということを繰り返しています。

赤ワインに含まれるのは「レスベラトロール」というポリフェノールで、高血圧の抑制や、脂肪燃焼率を高めるなどといった効果があることが実験によって確認されているようです。ただし、レスベラトロールは赤ワインでなくともブドウの皮やピーナッツの皮などにも含まれているので、わざわざアルコールを含む赤ワインから摂取する必要はないでしょう。

さて、レスベラトロール同様赤ワインに含まれるポリフェノールとして最近注目されてきているのが「エラグ酸」です。エラグ酸が注目されているのは、抗癌性に対する期待からです。これは、エラグ酸が持つ抗酸化作用が、癌細胞にある過酸化脂質、つまり活性酸素により酸化された脂質を中和するからではないかと考えられているようです。ただし、抗癌性についてはまだマウスでの実験の段階なので、人体の癌治療に使えるかどうかはこれから確かめられていくでしょう。

同じくマウスでの実験段階のものでは、エラグ酸は肝臓の脂肪と血糖値を下げるという効果もあるらしいことが分かっています。ということは、肝硬変の原因となる脂肪肝や、糖尿病の改善なども期待されるということです。

女性の目を引きそうなところでは「美白効果」があります。エラグ酸は、日焼けやしみの原因となるメラニンを生成する酵素の働きを抑える力があるため、正確には「美白」というよりは「日焼けしにくい」もしくは「しみができにくい」効果があると言えます。

ただ、エラグ酸も赤ワインでなくてもいちごやラスベリーなどのベリー類、クルミ、ザクロなどの果物やナッツにも含まれています。

エラグ酸摂取のときの注意点は、エラグ酸はカテキンと拮抗するのでカテキンを多く含む緑茶などといっしょに摂ると、効果が薄まってしまうということです。

レスベラトロールにしろエラグ酸にしろ、抗酸化作用その他の健康に寄与する働きがあることは否定できません。ただ、上記の通り赤ワイン以外の食物にも含まれるポリフェノールですから、「健康のためになるポリフェノールが含まれているから」ということを、赤ワインを飲むための言い訳にするべきではないでしょう。

つまるところ、赤ワインはアルコール飲料ですから、アルコールの摂取による弊害も十分考慮し、あくまで嗜好品として節度を持って楽しんだほうがいいと思います。

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