ワイン生産国に見るワインの搾りかす利用の「もったいない」精神
ケニアの環境保護活動家ワンガリ・マータイさんが日本語の「もったいない」という言葉を広めて以降、この件を一番誤解しているのは日本人ではないかと思います。
wikipediaには、以下のようにあります
“「もったいない」に感銘を受けた後、この意思と概念を世界中に広めるため他の言語で該当するような言葉を探したが、「もったいない」のように、自然や物に対する敬意、愛などの意思(リスペクト)が込められているような言葉が他に見つからなかった。
消費削減(リデュース)、再使用(リユース)、再生利用(リサイクル)、尊敬(リスペクト)の概念を一語で表せる言葉も見つからなかった。”
要するにこれは、言葉の表現の問題。
様々な含意がある言葉として「もったいない」にあたる言葉は日本語以外にはなかったというだけの話で、それぞれの含意を表す言葉は世界各国に存在します。
ところが、日本人の大多数は「もったいない」という概念自体が日本にしかないというふうに誤解してしまっている。そのようなわけはないということは、他国に暮らしたことがある人ならわかるはず。
例えばワインの搾りかす。
これを日本のワイナリーではどうしているのでしょうか?
現在、日本ではワインの搾りかすを堆肥にするとか、家畜の餌にするなどといった研究が行われているようです。
なるほど捨てずに堆肥にするのは確かに有効利用でしょう。しかし、このやり方は「もったいない」。
欧州のワイン生産国では、そのようなもったいないことはせず、搾りかすからさらにお酒を作ります。
赤ワインの場合、皮や種ごと発酵させた後にしぼり、白ワインの場合はまずブドウを絞ってから発酵させますが、いずれにせよ絞りきってしまうと雑味までが含まれてしまうため、ブドウに液体成分が残る程度しか絞りません。
果汁をある程度含んだ搾りかすは、そこからさらに発酵され、しぼってから今度は蒸留します。
この搾りかすから作られた蒸留酒を、フランスではマール、イタリアではグラッパ、スペインではオルホなどと呼びます。それぞれ国によってそのまま飲んだり、熟成させてから飲むなど様々。
蒸留酒を作った後の搾りかすはもう捨てるのか?
確かに果肉のほうはそれから肥料などとして利用されますが、搾りかすに含まれる種からは、油が搾りとられ「グレープシードオイル」として使われます。
グレープシードオイルはフランスではオリーブオイルよりも好まれる油。
このように、歴史あるワイン生産国には、ブドウを無駄にしない工夫の伝統があるわけ。こういうことを知っていれば、「もったいない」の精神は日本にしかないなどと恥ずかしいことを言うはずがありません。
日本にも、こういう文化まで受け継ぎ、搾りかすから蒸留酒を作るワイナリーはいくつかあります。実はキリン傘下のメルシャンのような大きい会社でもマールを作っています。ただ、まだまだメジャーではありません。
ワインの文化を広めるというならば、上辺だけではなくワイン文化から生まれた「もったいない」文化まで広めるべきでしょう。