会員制スーパーコストコの巧みなワイン販売戦略とは?

1999年に日本に進出して以来、2020年現在日本全国に30店舗を展開するアメリカの会員制大型スーパーマーケット「コストコ」。ダース単位の商品を売る会員制スーパーという、日本にはなかった業態で日本にはなじまないのではないかと進出当時は疑問を持たれていましたが、着実に業績を伸ばしているということです。

日本のスーパーは、客に商品を手に取らせるための陳列や動線などに工夫を凝らしているとのことですが、コストコはそんなことにはお構いなし。まるで京都の町のように碁盤の目状態に並んだ棚に、大量の商品が積み上げられています。そのかわり、手間がかからない分だけ価格が安くなっているわけです。

本家アメリカでは、コストコはワイン販売の業績を伸ばしているのだとか。その躍進の秘密を、アメリカのコラムニスト、マイク・ベセス氏が自らのブログで分析しました。アメリカではブログもツイッターも、プロが有益な情報を提供する成熟したメディアの一つになっていますね。

ベセス氏の分析によるコストコのワイン販売躍進の秘密は主に3つです。

商品数の絞り込み

アメリカでは、コストコ以外の大規模スーパーマーケットチェーンには常時数千種類のワインが揃えられているのだそうです。一つのカテゴリーにつきできるだけたくさんの酒類を揃え、不特定多数の客の需要を満たそうというのは、アメリカでも日本の大型スーパーと同じようですね。

それに対してコストコが用意しているのは100種類ほど。選択肢は一気に狭まります。しかし、ある研究ではたくさんの選択肢から一つを選ぶより、少ない選択肢から一つを選んだほうが満足度が高くなることが分かったといいます。選択肢が多すぎると人はついつい「他にもっといいものがあったのではないか」と気にしてしまい、満足度が下がるのだそうです。

コストコはさらに巧妙。100種類の商品の中には低価格商品から高級品まで幅広くとりそろえており、価格帯で分けるとさらに選択肢は狭まります。客は自分の予算の中からそれほど頭を悩ませずに商品を選び、満足することができるというわけです。

大量仕入れによる安定供給

コストコは世界中のワイナリーと専属契約をしてプライベートブランドのワインも販売しています。専属契約することで、業者は一定数の大口注文を、コストコは一定数の安定仕入れをできることになり、例えば天候不順による不作などは別として、仕入れている商品が突如ブームになって品薄になっても、会員は変わらぬ価格で購入することができます。

もちろん契約業者からの大量仕入れというのは他業種でも行われているわけですが、マクドナルドが中国の業者から消費期限を過ぎた鶏肉を仕入れていたように、低価格で買い叩くことによって品質が劣る商品をつかまされ、かえって企業の信用を落とすというリスクも存在します。

しかし、今のところコストコが専属契約しているワイナリーは安定品質のワインを提供している模様。信頼できる業者と専属契約できれば、三方丸く収まります。

早い回転による訴求効果

コストコは基本的に店に並べたワインは一ヶ月以内に売り切るように仕入れをコントロールしているようです。コストコで販売されているワインは、種類が少なめの上に常に同じ銘柄が揃えられているわけでもありません。特に希少な銘柄は一度店に並んだとしても買い逃したらまた一ヶ月後に買えるとは限りません。

顧客の頭に「買い逃がせない」ということが一度インプットされると、それだけでもう集客効果が生まれます。希少なワインを安価に購入できたという体験があるほど、顧客は店に引き寄せられます。

また、コストコを訪れる客のほとんどはワインだけ買って帰るということはないわけですから、ワインの回転を早くするだけで、店全体にとっての売上アップにも繋がることにもなります。

細かいところを見ていくともっといろいろな戦略があるのかもしれませんが、大局的に見ると以上がアメリカでコストコがワイン販売数を伸ばしている手法ということになります。ただ、これは会員制スーパーという業態だからこそできることかもしれません。

一度会員になると、同じものを買うにしても「せっかく年会費を払っているのだからコストコで」という心理が生まれますから、顧客を囲い込み、安定した販売戦略を立てられるわけですね。もしかしたら、ワインに限らずコーヒーや紅茶など嗜好性が高い飲料にも使える手かもしれません。

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