知る人ぞ知る欧州ワインの雄、スイスワインが日本上陸
1976年、アメリカの独立200週年を記念し、パリでフランスとアメリカのワインの対決が行われました。審査員は全員フランス人。ただし、産地や銘柄を隠したブラインドテイスティングによって勝敗が争われ、なんと、アメリカが勝利しました。
その後、1986年、2006年にも再戦が行われたものの、その全てでアメリカワインが勝利。特に2006年の対決では1位~5位までがアメリカが占めていたそうです。そこに至り、フランスワイン界の大物は、アメリカの努力をたたえ、ブランドに寄りかかったフランスのワインを窘めたとのこと。
まあ、全部『もやしもん』の受け売りなんですけど。
ブランド信仰が強い日本では、長いことワインといえばフランス産が一番という認識がありましたが、世界の現実はこんなものです。しかし、近年ではスペイン産やイタリア産ワインの評価も高まっているようです。主にフランス産より安いという点で。
ただ、実際のところスペインもイタリアも、ワイン製造の歴史ではフランスにまったく引けを取りません。というよりは、欧州のワイン文化はローマ帝国により広められたので、フランス、つまり当時のガリアへは遅れて伝わったと言えます。味の点でもスペインやイタリアのワインは一定の評価がありますね。
そして、我が日本の甲府ワインも海外でも高い評価を受けるようになってきており、いまさら「ワインはフランス産しか認めない(キリッ)」みたいなことを言うのはちょっと恥ずかしいです。
そんな中、最近注目されるようになってきているのがスイスワイン。実はスイスは世界でも5本の指に入るというワイン消費大国。スイスはフランスとイタリアに国境を接しているので当然といえば当然かもしれません。
そんなスイスのワインが日本ではあまり知られていなかった理由は非常に単純。国土が狭い上に山岳国のスイスではそもそもブドウの生産量が少なく、当然ワインの生産量も少なく、その上に国内消費量が膨大なのでスイスの国外に出ることがほとんどなかったから。
ところが近年、スイスで栽培される白ワイン用ブドウの「シャスラ」という品種がワインに関わる専門家たちから高い評価を受けるようになってきました。勢い、シャスラとそれで造ったワインはスイス国内でも再評価されるようになっていきます。
そうした流れの中「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されて世界的に注目を受けました。そして、和食に触れたスイスの醸造家は、シャスラで造った白ワインと和食の相性がいいことに気付いたのでした。シャスラで造った白ワインは、香りも酸味も控えめで、和食の個性を殺さないといいます。
スイス最大の湖・レマン湖の南岸はフランス、北岸はスイスに接しています。そのスイス側にヴォー州という地区があります。ヴォー州はシャスラの生産量スイス2位。世界中でシャスラの8割はスイスで栽培されているそうなので、世界2位と言い換えても間違いではありません。
この地区のシャスラは、11世紀より続くシトー修道会の修道士が斜面を開墾し、栽培したのがはじめという歴史あるものです。
そのヴォー州のワイン生産者協会は日本への販路を拓くべく活発なピーアール活動を始めました。シャスラが原料のワインは既に日本でも入手できるので、興味がある人は探してみてはどうでしょうか?