next glassというワインアプリの功罪とは?
アニメ『ガッチャマン クラウズ インサイト』は、空気に流され、責任を誰かに丸投げして思考を停止しながらも、自分に都合のいいことだけ求める大衆が生み出す社会の歪みを描いた作品ですが、今の日本の社会情勢のみならず、考えることをやめた人間が作る世界は恐ろしいものです。
最近のデジタル技術の進歩というのは、逆に人間をバカにしていっているのではないかと思うことがあります。例えば「next glass」というアプリもその一つ。
next glassは、自分のワインやビールの好みを登録しておくと、店頭に並んでいるワインやビールが自分の好みに何パーセント合致しているか判断してくれるというものです。これは、およそ2万3千種類の銘柄の成分をオリンパスの医療用分析機で分析し、それと登録者が選んだワインの成分がどれだけ合っているかで好みかどうかを判断するという仕組みです。
自分の好みさえ登録しておけば、買ったことがない商品でもアプリに登録されているものであれば、ラベルをスキャンするだけでその場でアプリが好みにあっているかどうかを「決めて」くれます。
確かにこのアプリを使えば、飲んだことがない銘柄を買ったものの好みに合わなくて失敗するということは減るでしょう。しかし逆に、アプリを頼って安牌ばかり引くようになれば、それまでの自分の好みとは違う味に出会うということもなくなります。
next glassは、自分以外のユーザーの好みも調べることができます。next glassを紹介したある記事では、友人たちを招いてアプリで好みに合ったワインを選び、提供すれば「センスのいいワイン通」の名声を得られるなどと書いてありましたが、私個人の意見を言えば、自分の頭を使わずアプリに頼って選んだものを出してくる人は「センスがいい」などとは思えません。
友人たちを招く前に自らリサーチして、自分自身の感性で選んだワインを提供する。これが本当の意味での「おもてなし」というものでしょう。それをするためには、コミュ力が必要だし、様々な味のものを自分の舌で味わっておかねばなりません。ソムリエのようになれとまでは言いませんが、アプリでお手軽に選ぶのと、自分が分かる範囲ででも自分で考えて選ぶのとではそこにこもった心が違います。
next glassで選んだものを参照し、そこから自ら味わってみて選ぶというならまだありではないかと思うのですが、丸投げはダメでしょう。丸投げばかりを続けていたら、アプリなしでは何も決められない人間になってしまいます。
デジタル技術はあくまで生活を豊かにするためのもの。みずからそれに支配され、依存するようになっては本末転倒です。