もうソムリエはいらない!?ナノセンサーでワインの味がわかる!
ワインのソムリエや評論家がワインの味を表現する言葉は独特です。例えば、日本人ソムリエの田崎真也さんがコンクールで世界一になったときの表現はこうです。
「このワインは小さい頃、遊び回っていた福岡県のお寺の庭の土の匂いがします。二つ年上のめぐみちゃんという女の子と追っかけっこをして、ころんだときにつかんだ草についていた土です。」
ご自身の体験に根差した詩的な表現ではあると思いますが、さっぱりわかりません。プロレベルのイマジネーションがない我々は、もうちょっと具体的な味の指針が欲しいところ。
現在ワインは全世界に750mlのボトルにして300億本以上が流通していますが、ワインの味にはブドウの種類はもちろんのこと、ブドウが育った土の成分、日照時間など様々な要因が関わってきているため、素人が自分好みのワインを選ぶのはとても難しいことです。
デンマークの研究グループは、このたびワインの味を判定する技術。いわば「人工の舌」を開発しました。
これは、光学ナノセンサーによりワインに含まれる「タンニン」が人間の舌を刺激する程度を判定できるというものです。ナノセンサーとは、ごく簡単に言うとnm(ナノメートル=1/10億mm)レベルの微細な成分も測定できるセンサーのこと。タンニンは、ワインの渋み成分で、ワインの風味にも影響するものです。
人間がワインを口に含むと、ワインに含まれるタンニンと口の中のたんぱく質が反応して、渋みを感じます。この反応を「収斂性」と呼びますが、ナノセンサーはこの収斂性の程度を測定。その数値により、人間がどう感じるかまでを判定できるといいます。
例えば世界最高のプロのソムリエであろうとも、その個人の好みや先入観などがあり、必ずしも客観的評価を下せるわけではありません。しかし、ナノセンサーの判定ではそうした人間には避けられない要素がなく、ただ客観的数値を出すだけです。
これはつまり、産地やブランド、あるいは値段などといったものとは関係なく、おいしいワインを探し出せるということ。もしかしたら、目が飛び出るような高価なワインよりも、手軽に買える値段のワインのほうがおいしいという結果が出ることもあるかもしれません。
研究グループは、このセンサーの新しい点は、成分を測定できるだけではなく、その結果によって起こる効果も測定できることだとしています。さらに、このセンサーに用いられている技術はワインの判定だけでなく、病気の発見や予防など、医療分野にも応用できるという点もアピールしています。