飲食業界の関係者が注目するワイン関連ビジネスとは?

飲食業界ではこの10年、低価格が売りの和食ダイニング系チェーン店に人気があり、日本酒、焼酎、ハイボールとドリンクメニューのブームも続きました。ところが近年、このような居酒屋業態の人気にも陰りが見えてきたそうです。

近頃は洋風でバル業態の飲食店に人気が集まっているのだとか。「バル」とは喫茶店でもあり居酒屋でもある食堂のこと。スペインなどの街角に多く見られます。小皿で提供される料理「タパス」を何種類も楽しめるのが魅力です。

一品料理の価格が安いので多くの料理を楽しめる点と、気軽にワインを飲めることで若い女性客の心をつかんだのでしょう。中には塊肉をシェアする肉バル、海鮮料理専門の魚介バルなど、趣向を凝らした料理で他店との差別化を図る動きも出て来ていますが、新規メニューの開発には多くの時間を要します。

そこで注目されるのが、ワインをはじめとしたドリンクメニューの充実です。いかにしてドリンクメニューで差別化するか。飲食業界人のためのワイン・ドリンク展「World Foodians 2014 実行委員会」事務局長の佐藤哲二さんのお話を紹介してみましょう。

(「World Foodians」とは、世界中のワインやビールなどのドリンクを集めた展示会です。昨年が初開催にもかかわらず、飲食業関係者が7000名以上も来場して注目を集めました。飲食業界の情報サイトを運営する「飲食業界.com」が、このイベントを主催しています。)

「ワインを目玉とした飲食店が増えて来て、具体的には、ワインバーや手軽に本格的な西洋料理が楽しめるバル業態の人気が高まっています」

実際にワインの輸入量も増えているそうです。メルシャン株式会社の参考資料によると、“爆発的”な赤ワインブームであった1998年を超えて、2013年は過去最高なのだとか。

「俺のイタリアン」や「びすとろUOKIN」など、ドリンクメニューの中心にワインを置くバル業態で店舗数が順調に伸びており、今後もワインの輸入量は増えると予想されています。では、飲食業界ではどのようなワインに注目が集まっているのでしょうか。

「西洋料理店だけでなく、居酒屋チェーンの中にも、中~高価格帯のワインを揃えるところもあります」

1本千円以下で買える物もあれば、十万円以上の超高級品まで、ワインの値段は非常に幅が広いもの。数年前の低価格ワインブームの際には、大容量の箱型カスクワインを導入した飲食店も多かったのですが、中には品質の劣るものもあり、舌の肥えた飲み客を十分に満足させるには至りませんでした。

最近では安くて美味しいニュー・ワールドのワインがスーパーやディスカウント・ショップでも販売され、家でワインを楽しむ人も増加。彼らが外食するときには、より美味しいワインを求める傾向にあり、飲食店側も客の要望に応えて品揃えの充実を目指しています。フランスやイタリアの銘醸ワインを取り揃えたり、品質向上が著しい国産ワインを中心に提供する店も増えているようです。

ワイン・ドリンク展開催の契機についても尋ねてみました。

「世界中のワインが一堂に集まるイベントを立ち上げ、日本中の飲食店の方に来場して仕入の参考にしていただきたいと思いました」

以前からもワインを試飲できるイベントはあったのです。ただ、国別の開催であったり、規模が小さかったり。昨年の参加者からは、「ここまで大規模なワイン中心の展示会がなかったのでとても新鮮だった」「仕入に直結した有意義なイベント」等の感想が聞かれました。専門性の高い展示会は、業界関係者に好評。今年は各国別のワインをテイスティングできるイベントも用意され、日本初登場のワインも試飲可能です。

「新たに問屋の方に待機していただく相談所をご用意いたします。相談所を利用していただくことで、問屋経由での取引が可能になると思います」

昨年は気になるワインを見つけても、仕入ルートを持たない飲食店では扱うことができなかったからです。

まだインポーターの決まっていないワイナリーや、ほとんどイベントには出展しないワイナリーも登場するので、希少なワインを発見できる絶好のチャンス。日本ソムリエ協会も特設パビリオンで世界各国のワイン情報を発信します。

ワイン以外にも、「國酒」である日本酒の新しい飲み方を提案する日本酒造組合のブース、全日本司厨士協会のトップシェフによるキッチンセミナーもあります。客層の多様化に伴い、料理でもドリンクでも、ますます他店との差別化が求められています。飲食業界人には必見の展示会であるでしょう。

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