フランス企業とタッグを組み、拡大されるエチオピアのワイン事業

「エチオピア」と聞いてぱっとイメージが湧くという人は意外と少ないのではないでしょうか?コーヒー好きの人ならば、あるいは「コーヒー豆の産地」というイメージがあるかもしれません。実際、エチオピアはアラビカ種の発祥地とも言われていて、日本の茶道に似た「コーヒーセレモニー」という儀式も存在します。

エチオピアはアフリカ大陸東部にある内陸国で、熱帯に属します。そのエチオピアで今、ワイン産業熱が高まりつつあります。

実はエチオピアとワインのつながりはかなり古くからあるのです。エチオピアには4世紀ごろにすでにキリスト教の一派であるコプト教が伝来され、現在でもコプト教から発生したエチオピア正教会が主流です。憲法により国教は設けられていませんが、キリスト教徒が6割いる事実上キリスト教国とも言っていい国です。

キリスト教とワインは切っても切れない関係。キリスト教の儀式にはワインが欠かせません。そんなわけで、エチオピアには古代からワインがありました。ただ、文化としてワイン利用の歴史はあったといっても、産業としてはそれほどの規模があったわけではありません。

第二次世界大戦後に国営企業がワイン生産の産業化を試みたものの、ヨーロッパのワイン産業に切り込んでいくというところまではいけませんでした。

エチオピアでのワイン産業が拡大したのはごく最近のことです。フランス・ボルドーのワイナリー・カステル社は、エチオピアの国営工場・ギョルギス社を買収し、すでにエチオピアでの事業を行っていました。

更なる事業拡大を狙っていたカステル社と、国内産業の多角化を計画していたエチオピア政府双方の利害が一致。2007年に、カステル社の現地子会社・BGIが新しい事業を開始しています。

カステル社はまず、エチオピア国内でのブドウ生産に乗り出しました。その候補となったのが、エチオピアの首都・アジスアベバの南にある「ズワイ」でした。ズワイは標高1630mの高地にあり、土壌は砂質で水はけがよくブドウに合っています。

カステル社はそこに125ヘクタールの農地を造成。ボルドーから75万本のブドウを運び込んで植えました。灌漑システムについては地面の上を水が流れる「地表灌漑」から、チューブを通した水が少しずつ作物に与えられる「点滴灌漑」に変更しています。

植えられた品種は赤と白で9:1。高地とはいえ熱帯ですから、その気になれば2期作も可能ですが、品質を安定させるために年1回の収穫に抑えられています。

このブドウ畑には、アフリカならではの問題も起きました。野生動物の侵入です。ハイエナや、ウシ科の草食動物レイヨウ、あるいはカバまで畑に入り込んで荒らすため、畑の周囲に幅1.5m、高さ1.5mの堀を掘って対応しました。そしてもう一つ、これもアフリカならではといえるかもしれませんが、人間に備えるために武装警備員が畑を守っています。

カステル社のワイナリーで働く職員は350人。ただ、ワイン生産の繁忙期には臨時職員を含めると1000人弱が働いています。職員は現地エチオピアの人たち。カステル社の進出は雇用創出にも貢献しているようです。このワイナリーには27300リットルのタンクが37つ。全て合わせて100万リットル超分の醸造が可能です。

生産されるワインは口当たりが軽いミディアムスイート。これは、本場ボルドーのような味にすると現地の人たちの口に合わないためで、ブドウらしさが生かされた味になっています。

このワインは主に、アメリカ等に渡ったエチオピア人移民向けと、エチオピアの近隣・ケニア、タンザニア、ルワンダなどに輸出されています。また、急速な経済発展で出現した富豪層にワイン熱が高まる中国の企業も30万本もの注文を入れました。

カステル社は、ズワイワイナリーの好調により、次のワイナリー候補地を探しています。ただ、ブドウ生産地の候補となるのは地方であり、そうした土地は水道や交通などのインフラの整備が立ち遅れているために思うような拡大をできずにいます。

エチオピアでワイン事業を行っているのはフランスの会社だけではありません。現地エチオピアの実業家・テスファキロス氏は元国営企業の「アワッシュワイナリー」を買収し、ワイン生産に乗り出しました。

現在、エチオピアのワイン事業が目指しているのは南アフリカ並みの販売量です。南アフリカは17世紀からワイン事業が始まり、18世紀にはヨーロッパへの輸出も活発になっています。現在では、南アフリカはワイン生産量も輸出量も世界で10位前後。アフリカの諸国の中では追随する者はいません。

2013年に南アフリカが輸出したワインの量は500万ヘクトリットル(ヘクトリットル=100リットル)。対してエチオピアは8万ヘクトリットルに過ぎませんでした。圧倒的な差がある両国ですが、アフリカ大陸で大きなシェアを占め、世界中に販売網を持つカステル社の参入でこの差が縮められていくことが期待されています。

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