「ウェルチ」誕生秘話。医者が造ったワイン代わりの飲み物だった?

「ウェルチ」といえば、ちょっとお値段お高めですが、果実の味をしっかりと味わえる、おいしいフルーツジュースのブランドです。

スタイリッシュな英語のロゴ、鮮やかなフルーツのイラスト入りパッケージが印象的なアメリカ生まれのジュースであり、今は日本でも愛飲されています。

とくにブドウジュースは、まるで赤ワインをそのままジュースにしたかのうような濃厚な風味で、お子さまのみならず、大人にも大人気のドリンクですね。

ところで、「ウェルチ」という名称、何が由来かご存じでしょうか。

ブドウの品種かな、と思いきや、「ウェルチ博士」という医師の名前だったのです。

19世紀後半の米ニュージャージー州、医師であったトーマス・ブラムウェル・ウェルチ博士こそ、後に大ヒット商品となるブドウジュース「ウェルチ」を作ったその人なのです。

一体、なぜブドウ農家ではなく、医師がブドウジュースを作ることになったのでしょう。

当時、米国においては禁酒法の運動が激しさを増していました。

しかし、教会には「聖餐式」があります。

聖餐式とはぶどう酒とパンをキリストの血と肉にたとえて参会者に分け与えるというキリスト教の儀式のこと。

ブドウ酒、つまりワインが必要だったのです。

そこでウェルチ博士は自宅のブドウ園のブドウを使い、聖餐式用のブドウジュースの製造を試みます。

しかしブドウの果実には酵母が含まれているため、そのままではアルコール発酵してしまいます。

ウェルチ博士は発酵を止めるため、牛乳の殺菌方法から着想し、ビン詰めジュースの煮沸消毒を試みたのです。

その結果、ビン詰めジュースは数週間後も発酵による破裂がなく、結果アルコールを含まないブドウジュース作りが成功したのです。

現代では当たり前のように流通しているブドウジュースですが、当時は意外にも存在していなかったとか。

ブドウといえば食用かワインで消費されるのみだったそうです。

アルコールに対する風当たりが強い中、ウェルチ博士のブドウジュースで無事教会の伝統儀式を守ることができました。

その後ウェルチ博士のブドウジュースは、シカゴで開催された世界博覧会(1893年)で出展され、「ウェルチ」の名を世に知らしめることとなったのです。

さらにその知名度を上げたのは1913年。

禁酒運動が続くアメリカの外交晩餐会において「ウェルチ」のグレープジュースが提供されました。

当時、アルコールを含まない果実飲料は「ウェルチ」のみ。ワインに代わる自然飲料としての提供でした。

この外交は「グレープジュース外交」と呼ばれるほど話題を呼び、全米での知名度を決定的にしたのです。

現在、「ウェルチ」はグレープジュースのみならず多くの果物を原料とする製品を扱うようになり、「アメリカのフルーツバスケット」と呼ばれるほどになっています。

まさか医者である自分の作ったブドウジュースがアメリカの「国民的飲料」となり、全世界での人気を博すとは、ウェルチ博士自身も想像すらしていなかったでしょう。

日本ではカルピスが販売しており、その人気は定着しています。

今では、お酒を飲めない妊娠中や授乳中の女性がワイン代わりに飲むこともあるとか。

禁酒運動はとうの昔に終焉を迎えましたが、ワインの代用品としてもったいないくらいのおいしさだからこそ、世界に認められたのでしょう。

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