極上ワインと普通のワイン、どう違う?
ワインといえば高級品、というイメージがありますよね。
しかし、ヨーロッパを見てみると、庶民から王侯貴族にまで広く親しまれている、ごく一般的な飲み物だと分かります。
私たちとそう変わらない一般の人々が、毎日好んで飲むような飲料なのですから、ワインを楽しむために難しい理屈は、本来ならばさほどいらないはずです。
グレート・ワインと呼ばれる極上ワインや、ビッグ・ワインと呼ばれる優れた品質のワインは、実は、ワインのごく一部に過ぎません。
安くて、若いものこそがワインの大多数なのです。フレッシュ&フルーティこそ、ワインの本領だと言うべきでしょう。
昔とは違って、現代のワインは、安くても非常に優れたレベルの物がたくさん出回っています。
こうした一般のワインの発展を支えてきたのは、ひとえに科学の進歩によるものです。
今では全国のコンビニで500円台でも美味しく飲む事ができれば、その気になれば王侯貴族にも飲めなかったワインを飲むことも可能です。
こうした現代のワインは、ワイン造りに携わってきた人々の努力の結晶と言えます。
しかし、いまだにビッグ・ワイン以上のものを科学の力で作る事はできません。
発酵の仕組みも、香りの元となる、複雑な芳香物質の組み合わせも、どんな栽培方法をすれば良質なブドウが獲れるのかも、今ではかなり解明が進んでいます。
ですが、それらの代用品をすべて用意して、極上ワインをコーラのように大量生産できるかと言えば、それは出来ないのです。
いまだに、代々受け継がれてきた農園や、木樽を使って醸造し続けなければ極上ワインは生まれません。
さらに極上ワインが生まれても、良質のブドウが獲れた年の物をヴィンテージ物として重宝し、天然酵母が熟成してくれるのを静かに待たなくてはならないのです。
科学的に追求してみると、極上ワインの風味には天然酵母だけでなく、その土地の風土の中で、自然に紛れ込む細菌まで、風味を出すのに関わっていると言われます。
常識では考えられないほど繊細で、奥の深い文化なのです。奇跡によって生まれたような味が極上ワインの味なのです。
私たちが難しい事を考えずに、気軽に飲んで楽しめる一方で、ワインについて深く知る事は、数千年に及ぶ西洋の歴史や文化、科学の進歩を同時に知ることでもあります。
このような二面性を持ち、決して底が見えてこないのが、ワインという飲み物の魅力である、と言えるでしょう。