シャンパンだけがスパークリングワインではありません
「シャンパン」とはフランスのシャンパーニュ地方の限定地域で、決められた方法に基づいて造られたスパークリングワインだけが名乗れます。しかし、シャンパンだけがスパークリングワインではありません。
フランスでは、シャンパーニュ以外の地域のものを「泡のワイン(ヴァン・ムスー)」と呼び、各々の生産地を表記しています。ロワール地方の「ヴーヴレ」が量も多く有名です。フランスとスペインの国境付近にブランケット・ド・リムー地区があり、スパークリングワイン製造はシャンパンよりも歴史があると自負しています。昔はヴーヴレは貧乏人のシャンパンと格下に見られていましたが、現在はそのようなことはありません。
また、近年ブルゴーニュでスパークリングワインを造る所が増えていますが、特別に「クレマン・ド・ブルゴーニュ」という名前が認められています。イタリアのスパークリングワインと言えば「スプマンテ」です。古くは北部のアスティ辺りで細々と造っていたものが、大手の参入で大きく変わりました。昔のスプマンテは、マスカットブドウが主原料で、果実味のある甘い可愛らしいものでしたが、現在は辛口のものが増えました。
ドイツは「ゼクト」です。品質はピンキリですが、シュロス・ヨハニスベルクのゼクトは最高品質です。泡が非常に細かく、繊細な味わいを持っています。東欧からの輸入ワインで造った低価格なゼクトなどもありますが、真面目な作り手のものであれば捨てたものではありません。
スペインでは古くから色々なところでスパークリングワインを造っていましたが、あまりぱっとしませんでした。20数年前からバルセロナ近郊で良質なスパークリングワインを本格的に造り始めたのが「カバ」です。品質も改良され、世界的にもメジャーになってきました。
アメリカでも各地でスパークリングワイン造りがさかんです。カリフォルニアではハイツやシュラムスバーグの高級ワインが初期の頃より有名ですが、近年、ブティックワイナリーと呼ばれる中小零細メーカーが流行していて、中でもアイアン・ホースが秀逸です。
また、アメリカの巨大市場に目を付けたフランスの業者が参入していて、フランス人がカルフォルニアで造ったスパークリングワインはシャンパンとの区別が難しいぐらい本格的です。
イギリス人はシャンパンが生まれる前からスパークリングワインを好んで飲んでいました。今もシャンパンフリークは多いようです。
イギリスではシャルマー方式(タンク内発酵)のスパークリングワインを製造していますが、品質がとても良いものができたので大ヒットしました。
日本で初めて壜内発酵の本格的なスパークリングワイン造りに成功したのは武田ワイナリー(山形県)でした。近年、全国各地でスパークリングワイン製造がブームになり、なかなか良品ができてきました。
大手はガス注入のスパークリングワインも開発し、安価ながらとても旨いものとなっています。これからはますます、スパークリングワイン製造が流行りそうな予感がします。